しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】 チョコレートドーナツ




色々と特集したいものはあるんだけど、しばし日本公開作品などを。
今日は19日から公開の『チョコレートドーナツ』を観ました。
チョコレートドーナツ(2012)アメリ
原題:Any Day Now
監督:トラヴィス・ファイン
出演:アラン・カミング/ギャレット・ディラハント/アイザック・レイヴァ/フラシス・フィッシャー
日本公開:2014/4/19
歌手になることを夢見ながら、ショーダンサーとして日銭を稼ぐゲイのルディ(アラン・カミング)は、ある日客としてやってきたポール(ギャレット・ディラハント)と恋に落ちる。
ルディはアパートの隣に母と暮らすダウン症のマルコ(アイザック・レイヴァ)のことを気にかけていたが
その矢先、薬チューの母親が逮捕され、マルコは一人残されてしまう。
マルコを預かり面倒を見るうちに、ささやかな家族の幸せを感じ始めるルディだったが・・。



 70年代のブルックリンで起きた実話を元に、育児放棄されたダウン症の子どもと家族を築こうとしたゲイカップルの愛情と、偏見との闘いを描くヒューマンドラマです。
 
 監督は俳優のラヴィス・ファイン
ラヴィスは映画のモデルとなった男性と同じアパートに住む原作者が書いたシナリオに感銘を受け、映画化を切望したのだとか。共同で脚本も書いてます。

 感動作品だと思って観たんですけど、まずやるせなさに打ちのめされました。
邦題のチョコレートドーナツとは、マルコの大好きのドーナツからですが、マルコはジャンキーな母にマトモな食事を与えられずドーナツが主食なんですね。
そんなマルコを正式に引き取りたいと考えるルディとポールのゲイカップルに、世間の目・・というか
法の目が厳しいんですよ。彼らにマルコの両親となる資質を問う以前に、ゲイであるがためにまともな人間扱いしてもらえない。見ていて怒りが込み上げるんですが、私たちの知らないところで、彼らはずっとその偏見に耐えているのだと思い知らされます。

 正直、ルディがマルコを最初に見かけてから、マルコを引き取るまでがあまりに期間が短く
よく知りもしないのに、ダウン症児を引き取ろうとするルディの気持ちを最初は理解できなかったのだけど
偏見を受けてきたルディだからこそ、自分のせいでもなんでもないことのために不幸になろうとしているマルコを見ていられなかったのだとわかってくるんですね。
ルディとポールがいかにマルコに当たり前の幸せを与えたかったか、3人で普通の「家族」になりたかったかが痛いほどに伝わって、悔しいのかなんだか自分でも判らないけど泣けて仕方なかった。
新人ながら、人々の心に潜む偏見と、同性愛者や障害者の苦悩を社会派ヒューマンドラマとして描き、かつ「愛とは」を問いかける作品に仕上げた監督はたいしたもの。

 アラン・カミングは舞台でトニー賞を受けるほどの実力者だそうで、
劇中、思いのたけを歌に託した彼のステージでのパフォーマンスにも心を動かされます。
ポールを演じたギャレット・ディラハントの、包容力と正義感にも感動。
マルコ役のアイザック・レイヴァ君は多分本当にダウン症だろうと思うんですが、彼がまた上手い。

デコボコだけど、家族としてささやかな幸せを求めた3人の純粋さが心に染みると同時に
たくさんのメッセージを受け止めました。