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映画ノート

【映画】 あなたを抱きしめる日まで




マーティン・シックススミス
のノン フィクション本『The Lost Child of Philomena Lee』を原作に、18歳で未婚の母となり、幼い息子と強制的に引き離されてしまった女性フィロミナ・リーの子供探しの旅を描くヒューマンドラマです。
あなたを抱きしめる日まで (2013)フランス/イギリス
原題:Philomena
監督:スティーヴン・フリアーズ
出演:ジュディ・デンチスティーヴ・クーガン/ソフィ・ケネディ・クラーク/アンナ・マックスウェル・マーティン
イギリスの片田舎で家族と暮らすフィロミナは、ある日、長年胸に秘めてきた秘密を娘に明かします。
10代で妊娠したフィロミナは修道院に入れられ、重労働を余儀なくされた挙句、
幼い息子アンソニーと強制的に引き離されたという過去があったんですね。
50年に渡る母の苦悩を知った娘は、仕事場で出会ったジャーナリストのマーティンに相談を持ちかける。最初は気乗りのしなかったマーティンですが、作家として再起をかける時期にあり、取材に同意。アンソニーアメリカに渡った事実を掴み、フィロミナとともに息子探しの旅に出るのですが・・

 監督は『クィーン』のスティーヴン・フリアーズ
フィロミナにジュディ・デンチ、原作者であり、旅のお供をするジャーナリスト、マーティン・シックススミスにスティーヴ・クーガンが扮します。

 アイルランドにおける修道院の実態は『マグダレンの祈り』で知ったところですが、
本作では修道院のさらなる残酷な事実が明かされることになり、その非情さに驚愕します。
でもそこはフリアーズ監督。
ジュディ・デンチを起用し母の愛を前面に出し、訳ありジャーナリストとのロードムービーとして描くことで、ユーモアと重厚さを併せ持ったヒューマンドラマに仕上げてくれました。




 フィロミナは、息子アンソニーに人目会いたい。
一日たりとも息子を忘れることのない彼女は、アンソニーが祖国アイルランドを、そして母のことを思うことがあったのかをどうしても知りたいのです。
アンソニーの思いにたどり着く過程はミステリーでもあり、フィロミナとともに一喜一憂してしまいました。

 とにかくデンチが魅力的でね。
好奇心旺盛で可愛らしく、ホテルの朝食を楽しむ様子なんか思わず頬が緩んでしまいますが
サバサバとして潔く、歯に衣着せぬフランクさも持ち合わせていて駄目なものは駄目と諭すんですね。
シニカルなマーティンが母親に叱られた子供のようになりながら
次第にフィロミナをリスペクトしていく様子が気持ちいい。

 真実を語ることをよしとするジャーナリスト VS カソリックという構図で
修道院の悪を明かしてはいくものの、憤りや悲しみを乗り越え、それでも赦しを与えることのできるフィロミナの姿に、彼女の信じる宗教の素晴らしさも感じます。
スティーヴ・クーガン自身も加わった脚本もいいんですね。

今回、フィロミナの語る言葉のひとつひとつにハッとするところがあり、いくつかをノートに書き留めました。
その中のひとつ「I don't want to hate people.」は究極にシンプルだけど、必ずしも簡単ではないでしょう。
でもそれを実践するフィロミナの強さに感動。
彼女のようにはなれないけれど、私も座右の銘として心に刻んでおこうと思ったのでした。

ちなみにこちら(下)が原作者のマーティン・シックススミス氏と本物のフィロミナさん



アカデミー賞では 作品賞、主演女優賞、脚色賞、作曲賞でノミネート
ヴェネチア映画祭脚本賞を受賞しています。
いい映画でした!