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映画ノート

【映画】誘拐の掟



誘拐の掟(2014)アメリ
原題:A Walk Among the Tombstones
日本公開:2015/5/30

作品情報

 あらすじ
 1999年。ニューヨーク中が連続誘拐殺人事件におびえる中、元刑事のマット(リーアム・ニーソン)にある依頼が舞い込む。それは妻を誘拐された夫からの、犯人を見つけ出してほしいというものだった。

感想
ローレンス・ブロックの『獣たちの墓』を『
ルックアウト/見張り』のスコット・フランク監督/脚本で映画化した犯罪サスペンス作品です。




冒頭、リーアム・ニーソン演じる刑事マットは休憩中のバーで強盗事件に遭遇。
犯人を執拗に追い、2人を射殺、一人に怪我を負わせ事件を速攻解決するマットだったが、彼はこのあと刑事を辞める。

数年後、私立探偵として生計を立てるマットのもとに、妻を誘拐された男から「犯人を捜して欲しい」との依頼が舞い込む。
妻はすでに殺害されていたが、依頼者の希望に応じる形で捜査に乗り出すマット。
しかし新たな誘拐事件が発生し、マットは猟奇殺人犯相手に身代金引渡しの交渉に臨む事になる・・・

犯人探しのミステリーという部分はサラリと流れていくものの
本作は第二の誘拐が起きてからが最高に面白い。

一見、お金にも名誉にも執着がなさそうなマットが
身代金引渡しの交渉で何故ここまで捨て身になれるのかと
素朴な疑問が沸きあがるわけですが、彼の背負ってきた十字架の重さを知り、彼が実行しようとしていることに気づくとき、とてつもなく心を動かされるんですよね。
ちなみにトレーラーは見せすぎなのであえて貼ってません。

冒頭でこそ『96時間』並みに強いニーソンを見せつけるものの
実は彼の真骨頂は、哀愁と優しさを感じる穏やな人間性
本作では本来のニーソンさんの魅力を堪能できます。


ニーソン以外のキャストのキャラクター構築もいいんですよね。
妻を殺された依頼人ダン・スティーヴンス)はヒリヒリするような存在感で映画に緊張感を与えているし、犯人グループの漂わせる不気味な残虐性もいい。表情や仕草で2人の関係性とその推移を表現させる演出も秀逸です。



作にはニーソンの相棒となるホームレスの黒人少年が出てくるんですが
出番は多くはないものの、マットとの友情を深めていくさまが心地いいんですよね。
何よりも彼の存在価値を感じるのはラストシーン!!

言葉を交わすわけでもなんでもない、見逃しそうなほどに地味なこのシーンで
ニーソンの長年の苦しみが静かに溶けていくのが感じられて泣けてしまった。

終盤の緊張感も半端なく、これ最高に面白かった。
ちなみに原作はかなりグロい展開になるようで、リベンジを重視したものを好むのなら
原作を読むのがいいかも。
獣たちの墓 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)


おそらくはレイティングにも配慮したと思うんですが
映画はニーソンさんの贖罪を中心に深いドラマで魅せる作品になっています。