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映画ノート

ストロンボリ/神の土地

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バーグマンは、ロベルト・ロッセリーニの作品に惚れて熱烈な手紙で自身をアピール
手紙に感激しバーグマン主演で撮った作品が『ストロンボリ/神の土地』。
2人は製作中に恋に落ち、W不倫の末バーグマンは夫と娘とハリウッドを捨てることになるんですね。
ということで、今日はその『ストロンボリ~』を。

【作品情報】
ストロンボリ/神の土地(1949)イタリア/アメリ
原題:Stromboli
監督:ロベルト・ロッセリーニ
脚本:セルジオ・アミディ、アート・コーン、ロベルト・ロッセリーニ
出演:イングリッド・バーグマン、マリオ・ビターレ、レンツォ・シザーナ、マリオ・スポンゾ


【あらすじ】
第二次世界大戦後、ローマの収容所には戦争で家族を失った者など、多国籍の女たちが集っている。
女たちが柵の向こうの捕虜の兵士たちを訪ねるのは、やがて開放される捕虜に取入って、収容所を抜け出すためだ。戦争で夫を亡くしたカレン(バーグマン)はイタリア人兵士アントニオの気を引くことに成功。
アントニオを結婚し彼の故郷へと赴くのだが、そこは度重なる火山の噴火により、住む人もまばらな秘境ストロンボリ島だった。

【感想】
戦争の混乱で道を閉ざされたヒロインが、美貌を武器に難民キャンプを抜け出すことに成功するが
嫁いだ先は火山活動で過疎化した村。
はなから夫に愛情はなく、「こんなところは自分の住む場所じゃない」と、島を去ろうとする というお話です。

まず特筆すべきは究極のリアリティでしょう。

火山の島ストロンボリでのロケは、途中実際の噴火に見舞われ、パニック映画の様相まで帯びてきます。
バーグマンは噴火のさなか必死に避難することになるわけですが
流れるように港に集まった村人たちは分散して舟に乗り込み、一気に島を脱出するのです。
そんな行動がとれるのは出演者に実際の村人を起用してるから。

ラスト付近、山を越えようとするバーグマンが煙に呑まれるシーンでは、本当に窒息するんじゃないかとハラハラしました。これ以上にないリアリティですね。

邦題に神の土地と副題がついていることにも納得します。
村人たちは、大漁を神に感謝し、噴火を逃れ船上で夜を明かすときにも神に祈って歌を歌う。
そこには神と切り離せない村の暮らしがあるのです。
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村人がカリンを受け入れないのは、単にカリンがよそ者だからではなく、習性になじもうしないカリンが村の統制を乱すことを怖れていたのでしょう。

「私はあなたたちとは違う」
カリンのそんな思いは彼女が何度も髪を梳く仕草に象徴されていたように思います。

戦争が引き起こした不運により、神への信仰を失ったカリンが
最後の最後に自分の生き様を恥し、お腹の子供のために生きることを神に祈るとき
彼女はようやく人となり、村に住む権利を得るのだと、そんな気がしました。

カレンが無事に村に戻ることが出来たのか否か、映画はその先を見せません。
神はカレンを許すのか、あるいは奈落の底に落とすのか
観るものがそれぞれに想像してもいい作品なのかもしれませんね。

マグロ漁シーンなど、ドキュメンタリーを思わせる映像や、命がけのバーグマンの演技も十分評価に値するものなはずですが、ロッセリーニと不倫に陥り妊娠までしたバーグマンへのハリウッドの風当たりは強かったようです。

こちら『ストロンボリ』撮影時のバーグマンとロッセリーニ
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