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映画ノート

生誕100年 イングリッド・バーグマン『ガス燈』

先月29日はかのイングリッド・バーグマンの生誕100年だったようです。
映画番組でも特集が組まれたり、カンヌでポスターに使われたりしたのは、そのためだったんですね。
バーグマンは誕生日当日にお亡くなりになったようで、生誕の日は命日でもあります。

クラシックに特化した当ブログとしては、そういったイベントにも着目し、古い映画を観る機会にしたい。
ということで、遅ればせながら生誕100年に際し、バーグマン主演作品を観てみます。
まずは、バーグマンが初めてオスカーに輝いた『ガス燈』から。

gaslight5

【作品情報】
ガス燈(1944)アメリ
原題:Gaslight
監督:ジョージ・キューカー
脚本:ジョン・ヴァン・ドルーテン/ ウォルター・ライシュ/ ジョン・L・ボルダーストン
出演:シャルル・ボワイエイングリッド・バーグマン/ジョセフ・コットン /メイ・ウィッティ/ アンジェラ・ランズベリー  /テリー・ムーア


【感想】
序盤からバーグマンの歌声にずっこける。
先生からもダメ出しされ
「そもそも私に叔母のような歌の才能はないわ」と歌手になることを諦めたポーラ(バーグマン)は、恋仲にあったピアノ弾きのグレゴリー(シャルル・ボワイエ)と結婚し新しい道を歩くことを決めます。

「どこに暮らす?ロンドンなんてどうだろう」
グレゴリーの言葉に顔を曇らせるポーラ。

ポーラにとってロンドンは叔母が殺された忌まわしい場所でした。
しかし、今こそそのトラウマに向き合うとき
ポーラはかつて叔母と暮らした家に、グレゴリーと共に移り住むことに。

しかし蜜月は長くは続きません。
グレゴリーからプレゼントされたブローチを失くした事を皮切りに
ポーラは「物忘れ」をたびたび指摘されることになります。

自分の記憶と言動に自信をなくすポーラに追い討ちをかけるのが天井の不審な物音
しかし侍女は何も聴こえないと言う。
私どうなっちゃったの?
ポーラは次第に精神を病んでいくのでした。



イングリッド・バーグマンがアカデミー主演女優賞を獲得した本作
怪しい人物は早いうちに特定されるため、観客は犯人の動機が何なのか、叔母の殺人事件との関連は何なのか、天井の物音とタイトルにもあるガス燈の秘密とともにすべてが明かされるのをひたすら待つことになりました。

この頃のバーグマンには原石の美しさに、薬師丸ひろこ的な素朴なダサさが共存してますね。
それだけに神経を病んでいく様が痛々しく、彼女を操作する存在が憎らしく感じます。
バーグマンは段々に神経を病んで行く過程を上手く演じてますが、丁寧に見せるあまりその弱弱しい姿に少々飽きてもきます。もういいよ!ってところでようやく事件が展開。
最後にポーラの大逆転と言うか
薬師丸ひろこで言えば『セーラー服と機関銃』的な、
思いがけない変貌に「快・感!」を覚えるのがミソでした。

姿の見えないところで犯人とキャメロン警部(ジョセフ・コットン)がドタバタやりあうところなど
古典的な端折りが面白い。
ポーラの記憶の曖昧さや言動を助長する侍女2人の演技と演出も秀逸で
不安材料だった古株侍女の証言に起死回生のヒットを生ませるのも上手いところでした。
モノクロ映像も美しく、雰囲気のいいサスペンスでしたね。