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映画ノート

【映画】アンジェリカの微笑み




アンジェリカの微笑み(2010)ポルトガル/スペイン/フランス/ブラジル
原題:The Strange Case of Angelica
監督/脚本:マノエル・ド・オリヴィエラ
出演:リカルド・トレパ、ピラール・ロペス・デ・アジャラ、レオノール・シルベイラ ルイス・ミゲル・シントラ、アナ・マリア・マガリャンエス
日本公開:2015/12

今年4月に106歳で亡くなったポルトガルマノエル・ド・オリヴィエラ監督が101歳のときに撮った作品ということで観てみました。

マチュア写真家のイザックはある晩、亡くなったアンジェリカの写真を撮るよう依頼され屋敷に赴きます。
まるで生きているような微笑を浮かべ横たわる美貌のアンジェリカ。
ところがイザックがファインダーを覗くと、一瞬アンジェリカは目を開きイザックに微笑みかけるではないですか。
驚くイザック。しかし以来彼はアンジェリカに魅せられてしまうのです。


平たく言えば、死体に恋した青年の顛末を描く作品です。
イザックはアンジェリカに会って以来、死に囚われていきます。
こういう作品は『ある日どこかで』みたいにSFにもなるし、
雨月物語』のようにホラーにもなる。
本作では本当に101歳で撮ったの?と驚くほどに可愛らしく幻想的なシーンもあるためファンタジーとして観ることもできるんですが、監督にとって死はあまりにも身近な問題であり、おそらくは自身の心の準備的な作品だったのかもしれませんね。

イザックを演じるリカルド・トレパは監督の実のお孫さん。
お顔はトム・クルーズサム・ワーシントンを足して2で割った感じなのですが、「アンジェリカー!!」の台詞しか覚えてませんw
演出としては小津風というか、カウリスマキ風で、全体としてはオフビートな印象もありますね。

ブドウ畑を耕す人々とか、目の前を行きかうトラック、物乞いをする人など、何か比喩的な意味があるんだろうと思いながら私の頭では解釈しきれません。
でも大家のおばちゃんの人情も心地よく、ポルトガルってなんかいいなぁと思ってしまった。
ハリウッドを皮肉ってみたり、古きよき時代を懐かしむ気持ちもあるのかな。
アンジェリカがウェディング姿なところには、おそらくは死別して長いだろう奥様への想いを重ねたのかなと思うと、最後はちょっと感動的でもあるんですよね。



幻の名作と言いきるには解釈が及びませんでしたが
薄明かりの映像とピアノの旋律の美しさが心に残る作品でした。

日本公開は12月です。