しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】蛇の穴

the-snake-pit-movie-poster-1948-1020459248

【作品情報】
蛇の穴(1948)アメリ
原題:The Snake Pit
監督:アナトール・リトヴァク 
脚本:フランク・パートス / ミレン・ブレンド
出演:オリヴィア・デ・ハヴィランド/ マーク・スティーヴンス/ レオ・ゲン/ セレステ・ホルム/ グレン・ランガン

【感想】

「眠れないの」
そう訴えるようになった新妻を心配する夫ロバート。
ある朝ベッドを抜け出し窓辺に佇むヴァージニアに声をかけると
「11月にしては暖かいわよ」と妻。

「11月?今は5月だよ。ふざけてるの?」
新聞の日付を見せるも興奮状態に陥る妻を目にし
「ハニー、病院に行こう」
かくしてヴァージニアは精神病院に入院することになる。

しかし間もなくして病院を見舞ったロバートは
ヴァージニアが自分のことも忘れていることに愕然とする。
そういえば幾度かおかしな言動はあったが・・
妻はどうしちゃったの?


メアリー・ジェーン・ウォードの自伝小説を
『私は殺される』『真夜中へ5哩』のアナトール・リトヴァクが映画化した一本です。
47年の作品とあって古めかしさはあるものの

入院して間もなく脳に通電する電撃療法を受ける
拘束衣を着せられる 
煙草を吸う患者にナースが火をつけてまわる 等
今では考えられないような精神病院での体験が生々しく描かれていて
興味深いものがあります。
snake-pit

しかし本作は精神科病棟の実態を暴くことを目的としたものではありません。
原作者が自伝を書いたのは治療が適切に行われたからに他ならないのですから。

担当医がヴァージニアのトラウマを発見していく過程など
まるでシャーロック・ホームズの推理を観てるような面白さがありました。
ヴァージニアは幼少時の出来事から潜在的にトラウマを抱えていて
恋人の出現や結婚が引き金となって発病していたのです。
snakepit

入院患者たちをときにミュージカルのように見せる演出も圧巻。
周囲がグニャグニャと得体のしれないものにしか見えない
そんな主人公の混沌とした状態を
「蛇の穴に放り込まれたようだ」と表現したところがタイトルの所以でしょう。

やがてこの蛇の穴を抜け出すことになるヴァージニア
精神を患う患者に一筋の希望を見せるラストが力強く、後味のよい映画になってます。
名作ですね。
ヴァージニアを演じたオリヴィア・デ・ハヴィランドが美しかった。