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映画ノート

【映画】追悼:ジョン・ギラーミン監督『かもめの城』

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【作品情報】
かもめの城(1965)フランス/アメリ
原題:Rapture
監督:ジョン・ギラーミン
脚本:スタンリー・マン
出演:メルヴィン・ダグラス / パトリシア・ゴッジ/ グンネル・リンドブロム/ ディーン・ストックウェル/ レスリー・サンズ / ピーター・サリス


【あらすじ】
フランス、ブルターニュの村外れ。厳格な父と海岸沿いの家で暮らすアニエスの友達は、浜のカモメと人形たち。
ある日父に人形を壊されたアニエスは案山子を作り愛情を注ぐ。そんな折、一家は横転した護送車から脱走犯が逃げ出すところを目撃。
その夜、アニエスは雨の中、案山子の服を着て倒れている青年を見つけ・・


【感想】
町山さんのトラウマ映画のひとつとして気になっていた作品です。
監督ジョン・ギラーミンの訃報が伝えられ、こんな機会になりましたが追悼の意を込めて鑑賞しました。
タワーリング・インフェルノ』で知られるギラーミン監督は、こんな地味な映画も撮っていたんですね。



アニエスを演じるのは『シベールの日曜日』の パトリシア・ゴッジ
シベールから3年。美少女ゴッジは胸も膨らみ随分大人になった印象です。

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アニエスが発見した青年は、実は昼間見た脱走犯でしたが、アニエスはジョセフ(ディーン・ストックウェル )と名乗るその青年が案山子の生まれ変わりと信じ、愛すようになるのです。


これいまどきのロリ好きにはたまらない映画かな。
「あなたは案山子の生き返り」と、アニエスの大きな瞳で見つめられ、「頭おかしいの?」と戸惑うジョセフでしたが、やがてアニエスの愛を受け入れ、二人は愛し合い、駆け落ちします。



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でもこの映画が悲しいのは、アニエスが彼女の精神を脅かすものの呪縛から逃れられないこと。
彼女は病んでいる自分を自覚していて、自分は精神病院に入るべきだとも言う。
根底には父(メルヴィン・ダグラス)と母との秘密がアニエスに暗い影を落としていると思うんですが、その内容は完全には明かされません。
母の浮気相手が父により銃撃された後、母は精神病院に収容されたのではないか。

また、アニエス姉の結婚式会場で新郎の弟に抱きつかれ、異常に拒否するのは母の情事へのトラウマか、あるいは父に暴力を受けることを怖れたのかもしれません。
一方で家政婦カレンの夜の遊びを追求するアニエスの表情は15歳らしい好奇心に満ちていて、アニエスの性への興味はとてもアンバランスなんですよね。

ジョセフを案山子と思うことでかろうじて保っていた心の均衡も、結婚生活という現実に直面することでガタガタと揺らぎ始める。やがて2人の暮らしは破綻し、訪れるクライマックス。


原題のRaptureとはwikiによると携挙というキリスト教の用語だそうです。
携挙の捉え方は諸説あるようですが、簡単にいうと「神によって天に引き上げられる。すなわち許し救われる」ということかな。また、その前に「仮の姿を与えられる」ともあるので、
映画の中でジョセフは、彼自身の罪を赦されると同時に、アニエスと父の罪を赦すために差し向けられた使徒だったのかもしれないと想像します。
美しい海辺の映像と、物悲しいメロディが映画の神秘性を高めるちょっと芸術的な作品でした。