しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】君が生きた証

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君が生きた証
(2014)アメリ
原題:Rudderless
監督:ウィリアム・H・メイシー
脚本:ケイシー・トゥエンター/ ジェフ・ロビンソン/ ウィリアム・H・メイシー
出演:ビリー・クラダップ  / アントン・イェルチン /  フェリシティ・ハフマン/  セレーナ・ゴメス/  ローレンス・フィッシュバーン / ウィリアム・H・メイシー

【あらすじ
広告代理店のエリート、サムはコンペを勝ち取ったお祝いに息子ジョシュをランチに誘うが
息子は約束の時間に現れない。
ダイナーをあとにしようとしたサムの目に飛び込んだのは息子の大学で起きた銃乱射事件のニュースだった。


今月は14日にオスカーノミネーションがあるので、このブログもオスカーモードに入りますが
平行してブロ友の皆さんのトップ10に挙げられた作品など、昨年観損ねた作品を観ていこうと思います。
まずはウィリアム・H・メイシーの初監督作品『君が生きた証』
突然息子を亡くした父親と、その息子の遺した歌に魅了された青年の再生を描く作品です。

主演のビリー・クラダップは最近どっかでお目にかかったと思ったら『スポットライト 世紀のスクープ』の教会側の弁護士ですね。
涼しい目をした善人顔なのに、教会の悪を闇に葬りのらりくらりなやなやつでしたが、今回も前半ちょっとその感じ。

広告業界のやりて営業マンのサムは、人当たりはいいが自分中心なところがちょっと鼻につくエリートとして演出されています。
電話で息子を誘う映画の中唯一の父と息子の会話シーンでも、息子の都合なんかお構いなし。
カジュアルに心が通じ合っていると思い込んでいた父親。
ところが息子が、ある日突然死んでしまうと、父は息子のことを何も判っていなかったことを思い知らされることになるんですね。

痛いよねぇ。
サムは息子を失った喪失感と同時に、仕事も仲間も自分自身への自信も全て失っている
そんな彼がジョシュの曲に没頭していくのは、最初は単純に息子の声が聴きたかったからだろうし
息子のことをもっと知りたかったからでしょう。
でも次第にサムは音楽そのものにも惹かれていくのがよく分かります。

メイシーさんが凄いなと思うのは、キャラや心情説明に時間を割かず(シチュエーションや表情で巧みに演出しつつ)、
音楽の魅力を最大限引き出そうとしてる点でしょうね。

前にマイケル・シーン主演の『ビューティフル・ボーイ(原題)』という、ほぼ同じテーマの映画を観ましたが、それも秀作だったけれどやはりちょっと暗い。その点、本作は音楽そのものに高揚感があって観やすいのがいい。

サムの抱えるものはとてつもなく大きいのだけど、彼はジョシュの遺した曲を通じクエンティンと知り合ったことで父性と人間性を取り戻し、
クエンティンもまた自信を得て前を向き始める。
最後にサムが歌うダサいほどにストレートな歌に親心のすべてが詰まってる気がしたな。

メイシーさんの実の妻で、今回はサムの元妻を演じたフェリシティ・ハフマンも凄くいい。
「逃げていてはなにも始まらない」というメッセージも力強い秀作でした。


ちなみにこちら 監督のウィリアム・H・メイシーさんご夫妻とお嬢さん。パパ似かな。

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