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映画ノート

【映画】シャーロック93歳!『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』

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Mr.ホームズ 名探偵最後の事件(2015)イギリス
原題:Mr. Holmes
監督:ビル・コンドン
原作:ミッチ・カリン
脚本:ミッチ・カリン/ジェフリー・ハッチャー 
出演: イアン・マッケラン/ ローラ・リニー/ 真田広之 / マイロ・パーカー
日本公開:2016/3/18


【あらすじ】
93歳になったシャーロックは最後の仕事となった35年前の事件を振り返る……。



【感想

93歳になったシャーロックは30余年前に現場を退き、今は海辺の農場で家政婦のミセス・ムンロ(ローラ・リニー)とその息子ロジャー(マイロ・パーカー)と共に暮らしています。
ミツバチの世話をする傍らで、最後に担当した事件簿を書き記そうとするシャーロックですが、事件の全容を思い出せません。

でも自分がこの事件を機に探偵業から離れたのには理由があるはずと
シャーロックは、記憶を手繰り寄せずにはおれないのです。

 






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シャーロックを演じるのは76歳のイアン・マッケラン
シャーロックを実在の人物として、ワトソン君の作り出したシャーロック像とのギャップを見せるのがまず面白い。
サー、マッケランのシャーロックはとっても洗練されております。

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服装や人物像だけでなく、事件の内容そのものも、小説で描かれているものは
ワトソン君の好意の改ざんがなされているというわけで
よく知られた(私は知りませんがw)シャーロックの最後の事件簿にも「もうひとつのストーリー」が生まれる。
それって嬉しいのか悲しいのか、ファンの気持ちはわかりません(笑)
とりあえず、シャーロックの記憶に迫った結果、名探偵の孤独と悔恨が浮き彫りになるわけです。


巷では元議員の公判が話題になっているけど
記憶障害というのは、自分を危機から守るブレイカーみたいな役割を担うものだと思うんですね。
シャーロックの場合、老いからくる「物忘れ」が主流みたいなので「逃避」ばかりでもないのだけど
映画は 真実に向き合い、自分の間違いを受け止めて初めて楽になることもあるのだと教えてくれます。


死人を見れば証拠探しや推理に走ってしまうのは、たんに「探偵バカ」なだけだと
むしろそんなシャーロックを楽しんできたので、それをこういうツラい話に落とし込むのにはちょっと驚いたけどね。
無力感に苛まれる年老いたシャーロックを見るのも悲しすぎた。

でも最後は もう孤独じゃないよ と思えたのは良かった。
ロジャー役の子役もローラ・リニーも好演です。

76歳にして、93歳と60代、二つの時代のシャーロックを演じたイアン・マッケランは本当に素晴らしかったので
オスカーにノミネートされなかったのは残念。

ただラストシーンの演出はいただけなかった。

あと、シャーロックが序盤に訪れるのが戦後間もない広島で、原爆ドームなどを映し出すのも意味深で
シャーロックの悔恨を「過去の過ちを受け止めよ」とのメッセージに被せた辺り
アカデミー会員から嫌われたかなと思わなくもない。