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映画ノート

【映画】『完全なるチェックメイト』冷戦に翻弄された捨て駒たち


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完全なるチェックメイト
(2015
アメリ
原題:Pawn Sacrifice
監督:エドワード・ズウィック
脚本:スティーヴン・ナイト 
出演: トビー・マグワイア /  ピーター・サースガード/ リーヴ・シュレイバー/  マイケル・スタールバーグ/  リリー・レーブ  / ロビン・ワイガート/ ソフィー・ネリッセ/ エヴリーヌ・ブロシュ/ シーマス・デイヴィー=フィッツパトリック

【あらすじ
これぞ代理戦争! 


【感想

ボビー・フィッシャーという名前は映画『ボビー・フィッシャーを探して』(未見)で記憶してました。
有名なチェスプレイヤーだったんですね。

ボビーが活躍したのは米ソが冷戦下にあった時代。
そのためボビーとソ連のグランドチャンピオンが決勝を争うこととなる1972年の世界大会は
両国の威信をかけたいわば代理戦争の様相を呈してくるんですね。

本作は天才といわれながら、その世界から姿を消したボビー・フィッシャーの数奇な人生を描く伝記映画です。

ボビー・フィッシャーを演じるのはトビー・マグワイア
負けず嫌いで傲慢なボビーの性格は天才ゆえと取れるところもあるんですが
50年代、母親が共産主義者の容疑をかけられていたことから、ボビーは監視の目に怯える幼少時代を過ごしており
そのことが彼の性格形成に大きな影を落としています。

世界大会のプレッシャーにより、ボビーは徐々に精神を崩壊させていく様子が緊張感を生み
その状態でゲームに臨むボビーを演じるトビーの演技が凄い。

私などはチェスのルールも知らないし、ゲームも殆ど見たことないんですが
ボビーをサポートする牧師を演じたピーター・サースガードの解説が挟まれるため
ボビーがどうゲームを闘ってるのかわかるのは親切な作り。


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しかしまぁ、一戦を欠席したり、別室での対戦を要求するなどわがまま三昧なボビーにビックリ
実話ですよね。よくまぁこんなことが通ったもんだ。
ボビーのパラノイアが リーヴ・シュレイバー演じるソ連のチャンピオンボリス・スパスキーに伝染する感じも面白い。
原題のPawn Sacrifice というのは、ボビーが伝説の試合で使った一手を表現してるんですが
犠牲になったのは冷戦に翻弄された捨て駒のボビーであり、スパスキーだということでしょう。

特にボビーに関しては精神状態がヤバいことなどわかっていたのに
それよりもソ連に勝つことが優先されたわけで、アメリカ怖いって話。
ボビーのその後の人生を思うと、シンパシーを禁じえませんね。

監督は『ラストサムライ』などのエドワード・ズウィック
ボビーのプレイヤーとしての成長を、社会の出来事と共に見せる手法が絶妙でね。
当時の流行歌がBGMで流れるのもノスタルジックでよかった。


緊張感や勝利の興奮、そして虚無感と
色んな感情を引き出すスティーヴン・ナイト(『オン・ザ・ハイウエイ その夜、86分』他)の脚本もいいんでしょうね。
もう少しユーモアがあっても良かったけど。


ロシア語を喋るリーヴ・シュレイバーピーター・サースガード、 マイケル・スタールバーグ
脇も実力者を揃えていて見ごたえがありました。


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