【映画】ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ
ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ(2016) イギリス/アメリカ
原題:Genius
監督:マイケル・グランデージ
脚本:ジョン・ローガン
出演:コリン・ファース/ ジュード・ロウ / ニコール・キッドマン/ ローラ・リニー /ガイ・ピアース
日本公開:2016/10/7
【あらすじ】
アーネスト・ヘミングウェイやF・スコット・フィッツジェラルドら世界的な作家を世に出した編集者マックスウェル・パーキンズは無名の作家トマス・ウルフに才能を見出し、出版を約束する。
【感想】
ジュード・ロウ、コリン・ファースがダブル主演で実在の作家と天才編集者を演じる伝記ドラマです。
ガイ・ピアースがF・スコット・フィッツジェラルド役で登場するので、今日は英国男優3人斬りね。
ジュード・ロウ演じるのはアメリカの小説家トム・ウルフ。知りません(汗)
長けりゃいいってもんじゃないのは顔だけじゃない。
ウルフの持ち込む原稿は莫大な量(しかも手書き)で、どこの出版会社からも相手にされない。
でも名編集者マックスウェル・パーキンズだけはウルフの文に目をとめるんですね。
そこから出版に向けての長い長い道のりが始まります。
編集といってもパーキンズが勝手に手直しするわけではなく、真の言葉を導きだすウルフとの共同作業。ダラダラ説明に終始した文が洗練された美しいフレーズに生まれ変わるシーンにはワクワクしました。
名作もはじめから傑作なわけではないですね。
自分で書く力もあっただろうにそうせず、埋もれた才能を開花させることに人生を捧げるマックス。エキセントリックで、できればお近づきになりたくないタイプのウルフに家庭を犠牲にしても固執するのは、その才能を確信しているから。
ウルフの原稿を読むときの至極の表情で、文学への静かな情熱を表現するファースの素晴らしいこと。
こんな暑い・・もとい熱いジュードを観るのはたぶん初めてで、俳優としてのジュードの変化も感じました。
この表情。心を通わせていく二人に言葉はいらないっていうね。
本作が初監督というマイケル・グランデージは舞台の演出家として活躍する方らしく、ウルフと愛人役ニコール・キッドマンのやり取りなどには舞台風な演出も見て取れます。
でもいったんカメラが外に飛び出すと、雰囲気は一転。
セピア色に彩られた20年代から40年代のニューヨークが、舞台ではどうしても表現できないだろう重厚さとスケールで映し出され、圧巻なのですよ。
ジャズをはじめとする音楽も本当に素晴らしく、映像と音楽だけでも「いい映画を観た!」という気にさせてくれる。
マックスの妻を演じたローラ・リニー、ウルフの愛人役ニコール・キッドマン、フィッツジェラルド役のガイ・ピアースもいい。精神を病んだ妻を支えるため小説家活動に没頭できなかったフィッツジェラルドのことなど、有名作家にまつわるエピソードも文学好きにはたまらないでしょう。
これしみじみよかった。
監督は今年のトップ10入り確実です。