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映画ノート

パンズ・ラビリンス


2006年(スペイン/メキシコ/アメリカ) 監督:ギレルモ・デル・トロ 撮影:ギレルモ・ナヴァロ  出演:イバナ・バケロ/ダグ・ジョーンズセルジ・ロペスアリアドナ・ヒル マリベル・ヴェルドゥ/アレックス・アングロ 【ストーリー】再婚した母に連れられ、山中でレジスタンス掃討の指揮をとる冷酷な義父のもとへとやって来た空想好きの少女は、やがて残酷な現実世界から逃避し森の中の不思議な迷宮へと迷い込んでいくが…。
■感想
アカデミー賞で撮影賞他3部門受賞。昨年の全米批評家協会賞でも作品賞を受賞するなど話題となった作品。


義父の家に着いた少女、オフェリアは、妖精に誘われ入った森のなかで、不思議な森の守護神パンに出会います。
パンは「オフェリアこそ、探し求めていた魔法の王国のプリンスに違いない」と明かし、確かめるためにある試練を課します。
果たしてオフェリアは、この試練をクリアすることが出来るのか。


なーんて書くと、子供向けのファンタジーと思う人が多いかも知れませんね。

ところがどっこい、これは監督の前作「デビルズ・バックボーン」同様、スペイン内戦後の混沌とした世の中を背景にした、かなり重いものでした。
森に潜むレジスタンス一掃を図ろうとする、将校の義父の冷徹さは血も凍らんばかりです。
殺戮シーンはかなり残酷でグロいので、間違えても子供と一緒に観ることのないように。
途中、うげー!それはやめて~!!!と目を背けてしまうシーンもありました。(汗)R指定ざんす。



オフェリアはこの義父のことがどうしても好きになれず、家を出ようと母にせがむものの、聞き入れてもらえず。
魔宮の世界への思いは、一つの現実逃避だったのかもしれません。


公開前でネタバレもどうかと思うので詳しく書きませんが、ラストは号泣ものでした。
虚しい戦いの時を生き、ファンタジーの世界に夢を馳せた少女の哀しさに胸が詰まります。


ただ、これ不思議な余韻を残すもので、
タイタニックのラスト、明るい舞踏会の階段でデカちゃんが笑顔で手を差し伸べる・・・、
そのシーンを見た時と同じような感覚にも陥ります。

オフェリアの最後の微笑み。。だからこそ、余計泣けるのです。


この作品では撮影技術も高い評価を得ています。
撮影を担当したギレルモ・ナヴァロによる映像は青っぽいダークトーンが印象的で、はかなくも美しい世界観を作り上げます。クリーチャーたちはちょっと怖いかも。



冒頭のハミングで流れる子守唄の物悲しい調べも心に残ります。
この子守唄をハミングしているのは天国の口、終わりの楽園。」でルイサを演じたマリベル・ヴェルドゥ
ちょっと老けました。(笑)


秋に公開。かなりお薦めです。





★★★★*