しまんちゅシネマ

映画ノート

ラスト・キング・オブ・スコットランド


2006年(アメリカ/イギリス)監督:ケヴィン・マクドナルド      原作:ジャイルズ・フォーデン『スコットランドの黒い王様』(新潮社刊)出演:フォレスト・ウィッテカー/ジェームズ・マカヴォイケリー・ワシントンジリアン・アンダーソンサラ・メリット/サイモン・マクバーニーデヴィッド・オイェロウォ【ストーリー】スコットランドの医学校を卒業したニコラス・ギャリガンは、高い志を胸にウガンダのムガンボ村にある診療所へとやって来た。それはちょうど、軍事クーデターによってイディ・アミンが新大統領となった直後のことだった。ニコラスはアミンの演説を聞いて、そのカリスマ性に強く惹きつけられる。そして偶然にも、ケガをしたアミンを救ったことからアミンに気に入られ、彼の主治医に抜擢される。やがてアミンは主治医という以上の信頼をニコラスに寄せ、ニコラスもまたその期待に応えようとするのだが…。

この人が怖い!! 私、待~つ~わっ♪の アミン大統領!! 違うっちゅうねん!

■感想
ご存知昨年の映画賞、主演男優賞を独占したフォレスト・ウィッテカー主演の政治サスペンスです。

彼が演じるのはウガンダに実在した大統領イディ・アミン
1971年にクーデターで政権を掌握し、1979年に失脚するまでの8年間に、30万人にものぼる反体制派の国民を殺したとされます。「アフリカで最も血にまみれた独裁者」なのです。

物語はスコットランドからやってきた青年医師、ニコラス(ジェームズ・マカヴォイ)の視点で描かれます。

多くの命を助けたいとの野心に燃え、ウガンダの地に赴いたニコラスにアミン大統領の演説は非常に魅力的に映ります。
偶然からアミン大統領の主治医を務めることになるニコラス。
大統領の信頼を受け、そのカリスマ性に惹かれていくのも自然なように思いました。

ある時反体勢力から襲撃を受けたアミンは、警戒を強め、残虐性をあらわにし始めるんですね。
ニコラスがアミンの異常性に気づいたときには、時既に遅し。。


注目すべきはフォレストの演技です。
鶴瓶似の人懐っこい笑顔を見せたかと思えば、次の瞬間には何者をも受け入れない氷のような冷たさで背を向ける。
その瞬時に変わる表情に、周りの空気が一変するのです。上手いですね。


           ↑このチャーミングさがくせもの。

アミン大統領について調べてみると、人肉を食べていたとか、裏切り者の首を切って冷蔵庫に入れていたとか、
その残虐な性格が浮かび上がってきますが、映画の中ではその猟奇性はさほど描かれません。

ただ、後半、アミンを裏切ることになった第3妻ケイの無惨な死に様には、目を覆うものがありました。
これもほぼ事実に基づいての描写のようで。。怖い人ですよ。アミンさんは。

後半は手に汗握るサスペンスフルな展開。
ニコラス役のジェームズ・マカヴォイの緊張感溢れる演技も見ものです。

アフリカの地の惨状を映画で知る機会が多い今日この頃。
この作品でもこの国の悲しい歴史を知ることになりました。

最後に現地の医師がニコラスに言った「この国の事実を伝えてくれ。白人の言葉は信じるから」という言葉は切実でした。

何がアミンをこういう人間にしたんだろうと考えてしまいます。
暴力の中で育った幼い頃のトラウマ?ニコラスが言う様に子供のように小心ものだったのでしょうか。

ラストシーン、自分の将来に思いを馳せる様に飛び去る飛行機を見つめるアミン。
彼には自分の人生を予知する特別な力があったのかもしれません。


ところで、アミンさんはウガンダの大統領なのになぜタイトルは【スコットランドの王】なのか。
疑問に思われる方も多いのでは?

答えは、劇中、悪い噂が世界に広まり始めたことを懸念するアミンが外国人ジャーナリストを集めて、記者会見をするシーンにありました。一人のジャーナリストの言葉をお聞き逃しなく!



★★★★☆