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映画ノート

ディーバ



 
1981年(フランス)監督・脚本:ジャン=ジャック・ベネックス    原作:ドラコルタ撮影:フィリップ・ルースロ     音楽:ウラディミール・コスマ出演:ウィルヘルメニア・フェルナンデス/フレデリックアンドレイ/リシャール・ボーランジェ/チュイ・アン・リュー【ストーリー】音楽を熱烈に愛する郵便配達夫の青年ジュールは、神秘的な歌声を持つディーバ=女神と出会い、彼女のアリアを盗み録りする。そんな中、彼のモビレッタ(原付自転車)に売春組織の内幕を暴露した告白テープが隠された事から、存在しない筈のディーバのテープ、地下組織の秘密が録音されたテープという2本のテープを巡って、彼はパリの町を逃げ、やがて迷路に迷い込んでゆく……。

スタイリッシュな映像美「ディーバ」

■感想
美しい歌声を持つオペラ歌手シンシア(ウィルヘルメニア・フェルナンデス)は音楽青年のジュールにとってはまさにディ―バ。
観客の前で歌うことを信条とすることから、世界に彼女のレコードは存在しません。
シンシアの歌に惚れ込むジュール(フレデリックアンドレ)はリサイタルでのその歌声を盗み撮りし、自宅で最高の音質でディーバの録音テープを聴くことを至極の楽しみとしていました。

そんなジュールがある犯罪に巻き込まれます。売春組織の一部始終を語った告白テープがジュールのモビレッタに隠されたことから、ジュールは組織の殺し屋に追われるはめに。
自宅アパートを荒らされ、ディーバの隠しテープの多くを壊され、残ったテ―プが犯罪組織に取引されるという一人歩きを始めてしまうのです。
殺し屋に追われるジュールは、バイクに乗ってパリの街を駆け抜けます。
スピード感に溢れ、手に汗握るサスペンスフルな展開。
ジュールは殺し屋から逃げ切ることが出来るのか。犯罪組織は暴かれるのか・・・。


本作は犯罪組織に絡むサスペンスドラマでありながら、ディーバとジュールの瑞々しい恋を描くロマンス映画でもありました。


まず、映像がスタイリッシュな魅力を放ちます。
ジュールの暮らすロフト風のアパート、アルバという少女が恋人ゴロディッシュと暮らす場所。
いずれも照明に浮かび上がる青が印象的に使われ、映画全体にアートで幻想的な雰囲気を与えているのです。


ディーバの音楽を聴くジュールが、仄青い照明に映し出される様子は、まるで絵画を見ているようです。
光と影の演出の上手さはまさに芸術的。ディーバとジュールが迎える朝の公園の風景にも心を洗われます。


映像の美しさに加え、登場人物が摩訶不思議な雰囲気を持っているのも、この作品の魅力かも知れません。
ジュールのオタクぶり、ゴロディッシュのつかみ所の無さ、殺し屋二人のシュールさ。
そしてディーバの歌うアリアの美しさ!!

物語を楽しみながら、芸術を堪能するような、そんな贅沢な作品ってそうそうないですよね。
監督の代表作「ベティ・ブルー」とはまた違った魅力です。

パリには色んな人種の人たちがいるんだなぁとも感じます。まさに多国籍な作品。

ジュールの純愛も素敵ですよ。




★★★★☆