しまんちゅシネマ

映画ノート

酔いどれ詩人になるまえに


2005年(アメリカ/ノルウェー)監督:ベント・ハーメル       原作:チャールズ・ブコウスキー『勝手に生きろ!』出演:マット・ディロンリリ・テイラーマリサ・トメイ/フィッシャー・スティーヴンスディディエ・フラマン/エイドリアン・シェリー/カレン・ヤング【ストーリー】アメリカの田舎町。“自称”詩人のヘンリー・チナスキーだったが、原稿は出版社に相手にもされず、食うために働くものの、いつも酒で失敗してすぐクビになってしまう。そんなある日、彼はバーでジャンという名の女と出会う。三日後には彼女の家に転がり込み、金のない2人は先のことなど何も見えない、酒とセックスだけの日々を送る。しばらくすると、チナスキーは仲間と競馬に入れ込み始める。そうすると、あっという間に小金がたまるチナスキーだったが…。
■感想
反骨の無頼作家チャールズ・ブコウスキーが自らの作家修業時代を基に著わした自伝的小説『勝手に生きろ!』の映画化です。

チャールズ・ブコウスキーって作家ご存知ですか?
1920年にドイツに生れ、ドイツ経済の崩壊とともにアメリカに移住。酒に明け暮れ、定職にもつかず、
浮浪者同然の生活を送りながらも、小説を書き続けたという伝説の酔いどれ作家らしいです。
代表作もいくつかあるようですが…すみません。どれも読んでません。

今回この作品を観ようと思ったのは、もちろん、主演のマット目当て。

映画の中では主人公の名前はヘンリー・チナスキー(マット・ディロン)。
臨時的な仕事を得ても、すぐに解雇され、転々とする毎日。
とにかく集中力もなく、やる気もまったくなしなんですよ。

ここでタバコを吸っちゃダメだと言われても、直後にはタバコに火をつける。
仕事を放棄して、バーで酒を飲む。。。

とにかく、延々とこのダメ人間ぶりが描かれるんですよね~。
特に盛り上がりもありません。

でも、マットがなんだかはまり役。アンニュイな風貌。けだるい会話。
まゆの下がった困り顔に、独特の間。これが不思議とユーモラスで時々ププっと笑ってしまいます。


恋人(リリ・テイラー)と暮らしてみても、生活に疲れるだけ。そして別れてはまた求める。。
でも互いに得るものなど何もない。

彼に書くことの才能がなかったら、ただの浮浪者の一生で終わっていたことでしょう。
お金がなくても、書くことを諦めなかったチナスキー。
作品の中でマットがナレーションで語るのは、作者の詩の一文でしょうか。
救いのない生活も、ことばにすると不思議とピュアな詩として輝きを放つのです。


へたれ人間を演じるマットの姿をひたすら楽しむ映画でしょうか。
音楽がこれまたアンニュイ。でも映画によくあってて、なかなかいいのです。


監督は「キッチン・ストーリー」のベント・ハーメル
ゆったりとした間のなかに、独特のユーモアと温かさがあふれます。

日本では公開中かな?


★★★☆☆