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映画ノート

その名にちなんで


2006年(アメリカ/インド)監督:ミーラー・ナーイル原作:ジュンパ・ラヒリ『その名にちなんで』(新潮社刊)出演:カル・ペン/タブー/イルファン・カーン/ジャシンダ・バレット/ズレイカ・ロビンソン/ライナス・ローチブルック・スミス/ジュンパ・ラヒリ【ストーリー】1974年、インド・コルカタカルカッタ)の学生アショケは、列車での旅の途中、親しくなった老人から“海外に出て経験を積め”とアドバイスされる。その直後、列車は転覆、アショケは手にしていたゴーゴリの『外套』が目印となり、奇跡的に救出される。3年後、アメリカの大学で工学を学んでいたアショケは、見合いのためコルコタに戻りアシマと結婚すると、彼女を連れてニューヨークで新婚生活をスタートさせる。慣れないアメリカでの生活に戸惑うアシマだったが、やがて夫婦の間に元気な男の子が生まれ、名前はゴーゴリと決まる。しかし、ゴーゴリは成長するに従って自分の名前を嫌がるようになり、大学生になるとニキルと改名してしまう。
■感想
新春第一弾はこれ!
2007年の映画賞や、トップ10の中にことごとくタイトルが挙げられていて、とても気になっていた作品です。
いやーー、これは最高に良かったです。

原作はデビュー短編集『停電の夜に』でピュリッツァー賞を受賞したジュンパ・ラヒリのベストセラー。
結婚を機にアメリカで暮らすことになったインド人女性アシマの半生を感動的に綴ります。

夫アショケと慣れないニューヨークで新婚生活を始めたアシマ。
異国で戸惑い、孤独を感じるアショカでしたが、間もなく元気な男の子を出産。
病院を退院する時のやり取りが可笑しいのですが、退院時には書類に赤ちゃんの名前が必要ということで名前を決めることを求める病院側に対し、子供の名前はインドからおばあちゃんが来てから決めるからと、全く焦らないアショカ夫妻。
親戚の子供たちもみんな6歳まで名前はなかった。なんて話しも出て、風習の違いにびっくり。


そんなこんなで、とりあえず名前が必要になった赤ちゃんに与えられた名前がゴーゴリ。これはロシアの作家の名前で
父親であるアショケが列車事故にあった時に手にしていた本がゴーゴリの「外套」。
アショケはこの本っを手に持っていたことによって命が助かったという経緯があり、これは"奇跡"の本だったんです。

そして生まれて来た子供はアショカにとって2つめの"奇跡”。
だからこそ、アショカは子供にゴーゴリと名付けたんですね。

しかしながらゴーゴリという名前はインド人にも、そしてアメリカ人にとっても変わった名前。
大学に進学するにあたり自分の名前に不満を持つようになるゴーゴリですが…。

名前を巡る親の思い、子供への愛を感じる作品です。
また、くらしぶりは勿論、結婚、お葬式などインドの文化を垣間みることが出来、インドという国に興味を持ちました。

タイトルは「その名にちなんで」。
名前を嫌がるゴーゴリに、その由来を教えてあげることは出来たのでしょう。
でも父がそのことをためらったのは"奇跡”の神聖さを感じたからなんでしょうね。

ゴーゴリの名前のことだけでなく、本作には名前に関わるエピソードがいくつか出てきます。

印象的だったのは、息子のアメリカ人の恋人にアショケ、アシマと名前で呼ばれ不快感を表す両親。
日本でもそうですが、名前の呼び方によって、目上の人に対する尊敬の気持ちなどを表すことが出来ますよね。
アメリカではボスも社長も、両親もなんでも名前で呼んで問題無し。
日本で「おはようございます、太郎。」なんて社長を呼んだりしたら即刻クビになりそうですがヾ(´∀`*)ノ
文化の違いを感じる一幕です。



望郷の念や、家族の絆の深さ、親から子供に込められた想いなどを優しく綴った本作。
観終わった後には"自分の名前の由来は?"と考え、そこに込められた親の愛を感じることでしょう。


素晴らしい作品でした。そしてタージマハルは息を飲む美しさ。




★★★★★