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映画ノート

クジラの島の少女


2002年(ニュージーランド/ドイツ)監督・脚本:ニキ・カーロ原作:ウィティ・イヒマエラ出演:ケイシャ・キャッスル=ヒューズ/ラウィリ・パラテーン/ヴィッキー・ホートン/クリフ・カーティス/グラント・ロア【ストーリー】ニュージーランドの小さな浜辺の村。祖先の勇者パイケアがクジラに導かれこの地へ辿り着いたという伝説を語り継ぐマオリ族。彼らは代々男を族長として村を守り続けてきた。ある時、族長の長男ポロランギは双子の男女を授かった。だが、喜びも束の間、男の子と母親は出産時に命を落としてしまう。ポロランギは悲しみに暮れ、一人娘を残して村を去って行った。娘は伝説の勇者と同じ名前パイケアと名付けられ、祖父母のもとで育てられる。パイケアが12歳になった時、村では彼女と同年代の少年たちが集められ後継者育成の訓練が始まる。しかし、女であるパイケアはその訓練への参加を許されなかった…。
■感想
ニュージーランドマオリ族の人々が暮らす浜辺の村。
伝統を守りながら生きてきた村人たち。しかし時の流れの中で、新しい文明が入り込み、
働き盛りの男たちは職を求め村を離れ、マオリの伝統を守る心も、結束する精神も薄れがち‥。

物語はそんな村に暮らす人々のお話です。。

伝説の勇者の名前を持つ12歳の少女パイケアは、自分が女の子であるという理由で
おじいちゃんを悲しませていることを悟っている少女でした。
パイケアと族長であるおじいちゃんの間には、血のつながった家族でありながら、ある確執があったのです。
伝統により引き離されていたのかもしれません。それは次男として生まれたものも同じ。

パイケアはそんなおじいちゃんとの関係を哀しく思います。
でもおじいちゃんが、族長として責任を感じ、村を愛し、伝統を守ろうとする気持ちは解っていた。

学芸会のスピーチの中で語られる、おじいちゃんへの気持ち、村への思い。
族長だけが頑張るのではなく、村のみんなが力を合わせて伝統を守り、村を愛していくべきであるということ。
そこに作者の言いたいことが全て集約されていたように思います。

これは、マオリ出身の原作者による新しい伝説ともいえる作品でしょう。
クライマックスは、パイケアが引き起こすある奇跡。
それによって村人の心が一つになるという構図は「風の谷のナルシカ」を思い出させますが、
少女の一途さにやはり感動してしまいます。


主演のケイシャ・キャッスル=ヒューズは、最年少でアカデミーの主演女優賞にノミネートされたことで話題になりましたが
純真でスピリチュアルな雰囲気を漂わせる演技はお見事。そして何よりも可愛い!
彼女もまたマオリ出身だそうですね。スピーチのシーンでは彼女自身の村への思いが重なったのでしょうか。
止めどなく流れる涙。そのひたむきさには心を動かされました。



美しい海。どこか日本の村を思わせる素朴な光景にも癒されます。


★★★★☆