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映画ノート

恐るべき子供たち


1950年(フランス)監督:ジャン=ピエール・メルヴィル原作:ジャン・コクトー出演:ニコール・ステファーヌ/エドアール・デルミ/ルネ・コジマ/ジャック・ベルナール【ストーリー】母を亡くし、ふたりきりになったエリザベートとポールの姉妹。ポールの友人ジェラールや、エリザベートのモデル仲間アガートがふたりの生活に入り込むなか、エリザベートを見初めた富豪が死亡。屋敷を受け継いだ彼女は、4人で共同生活を始める。やがて弟ポールはかつて憧れていた少年に瓜ふたつのアガートを愛するようになるのだが‥。
■感想
フランスの詩人・小説家・劇作家・映画作家であるジャン・コクトーが自らの小説を脚本化し、ジェン・ピエール・メルヴィルが初監督をした作品です。

物語はある雪の日、憧れの生徒ダルジュロスの投げた石の入った雪玉にポールが倒れるところから始まります、
友人ジェラールに自宅に運ばれるポール。そこは姉エリザベートとの「二人の部屋」。


ベッドを並べ同じ部屋で暮らす二人。
14歳のポールの前で普通に着替えをするエリザベートに見てて違和感を感じ始めるのですが、
やがてその違和感から目が離せなくなるのです。


二人の部屋に足を踏み入れたのはジェラールと、エリザベートの仕事仲間であるモデルのアガトーでしたが、
なんとアガトーはポールの憧れのダルジュロスに瓜二つ。
大人になりきれず、精神的な近親相姦ともいうべき姉弟の間に、ジェラールとアガトーという大人顔の二人が入り込むことから物語は緊張を高めていきます。

無邪気でいて残酷なエリザベートの狂気。破滅に向かってひた進む二人。
舞台劇的でもあり、そういうのに慣れない私にはちょっと違和感だったりもするんだけど
これ、大いに詩的であり、芸術的というべきなんでしょうね。


特に後半、茫然自失のポールがシーツを引きずりながら逆向きに歩き始めるという撮影方法にどっきり。
これがたとえようもない不安感をあおられてしまいました。
ちょっとベルイマンの「狼の時刻」に通じる感じかなぁ。

大人になることを拒むような、エリザベートとポールの禁断の愛情が生む悲劇。
衝撃のラストシーンも舞台劇のようでした。
ビバルディなどのクラシック音楽が崇高に奏でられこれが美しい。

劇中挿入されるナレーションもコクトーによるものらしいです。




★★★*☆