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映画ノート

【映画】仁義

フランスのジャン=ピエール・メルヴィル監督によるフィルム・ノワールです。

仁義(1970)
Le Cercle Rouge

【あらすじと感想】
出所前日のコレー(アラン・ドロン)、マッティ刑事(ブールヴィル)に列車で護送されるヴォ―ゲル(ジャン・マリア・ヴォロンテ)のシーンを交互に見せる序盤、繋がりに見当もつかないでいるところ、コレーは出所しパリに向かい、列車から逃亡したヴォ―ゲルがコレーの車のトランクに乗り込むという形で二人は初めて顔を合わせる。

仏陀によると「人はそれと知らずに必ずめぐり逢い、互いの身に何が起こり、どのような道をたどろうとも、必ずや赤い輪の中で結び合う」のだそうで
コレーとヴォ―ゲルも赤い輪の中にいる者同士。
煙草とライターの行き来だけで「それ」を確認し合うような二人の出会いのシークエンスが最高だ。
検問を逃れるため再びトランクに乗り込むヴォ―ゲルの「死ぬかもしれないから礼を言っておく」というセリフも、終盤ボディブローのように効いてくる。

やがて金に困った二人は宝石店強盗を実行することを決める。
射撃の名手である元刑事ジャンセン(イヴ・モンタン)を迎え入れ、ヴォ―ゲルを取り逃がしたマッティ刑事がリコを巻き込み事件を追う。
赤い輪の中で運命共同体たちが動き出す。

メルヴィルの演出は相変わらず渋い。
寡黙なドロンもいいけれど、本作ではモンタンとブールヴィルの二人がいい。
モンタン演じるジャンセンが幻覚に苛まれる廃人のように暮らしていたのは、アルコール中毒だったのかな?
刑事のストレスはマッティ刑事の上司との関係など見ているとわかる気がする。
組織の中で淡々と仕事をこなすマッティだけど、彼は愛猫が心の拠り所となり、ストレスと折り合いをつけられていたのか。
仕事から帰るとバスに湯を張り始め、冷蔵庫に準備していた皿を出して猫に餌をあげる。それを二回見せることでマッティの家でのルーティンと優しく几帳面な性格を見せる演出も好き。

(強盗の)仕事の依頼を受けたことでジャンセンがアル中から回復したように見えるのはいささか無理があると思うのだけど、モンタンがカッコいいから許す。
全てを失ったジャンセンが、生きている証をむさぼるかのように強盗に力を貸す。その姿は刹那的でもありました。

邦題の『仁義』は女子的にはピンとこないのだけど
男でなくても痺れる映画なのは間違いない。

ビリアードのキューの先に滑り止めのチョークを塗って赤い輪を作る演出は
ヴォ―ゲルと2人のシーンだと有効だったかも。


映画データ
製作年:1970年
製作国:フランス
監督/脚本:ジャン=ピエール・メルヴィル
出演:アラン・ドロンイヴ・モンタンジャン・マリア・ヴォロンテ/フランソワ・ペリエブールヴィル