しまんちゅシネマ

映画ノート

カノン


1998年(フランス)監督・脚本・撮影:ギャスパー・ノエ出演:フィリップ・ナオン/ブランディーヌ・ルノワール/フランキー・バン/マルティーヌ・オドラン【ストーリー】かつて馬肉屋をしていた男は刑務所から出所後、愛人のもとで暮らしていたが、何もかもに嫌気がさし、施設に入っている娘に会うためパリへ向かう。だが全てのものに嫌悪感を持ってしまう男は何もかもが気に食わない。やがて施設の娘との面会が叶い、彼女を外に連れ出し安宿に入るが……。
■感想
温かい映画を観た後は、たまに苦い映画を観たくなるのは、
甘いものを食べたあとに酸っぱいものが欲しくなるのと同じ・・・ん?  
‥!!!!! 間違えた、甘いもののあとに酸っぱいもの食べたらお顔が梅干しになります!!

と、失敬。
優しい映画を観た後に、なんとなくこの映画を観てしまいました。

冒頭から主人公のおっさん、50歳(60くらいに見えますが)の人生が独白の形で語られます。
幸福とは言えない人生。。

不幸な身の上のおっさんも自分なりに頑張って肉屋を持つに至ります。
恋人も出来、娘をもうけるものの、母親は娘を育てることを拒否。
主人公のおっさんは、(おっと、この時はまだおっさんではないですが)娘を育てることになります。

やがて娘が初潮を迎えたある日、ある事件をきっかけに主人公は刑務所に入ることに。

出所後のおっさんの鬱屈した独白が延々と続きます。
仕事を得ようとしても得られない。不況のフランス。犯罪者である中年男を喜んで雇い入れるところは見つからない。

卑猥な言葉で語られる独白は、だんだんにヒートアップし、おっさんを過激な発想へと導くのです。
自分への情けなさはいつしか逆恨みの心を産み、、緊張感が漂ってくるんですね~。

驚くのは【映画館を出るなら残り30秒!】ってテロップが出ること(笑)
そこからカウントダウンが始まる。そしてついに!!

これは好き嫌いの大きく別れる作品でしょう。
決して気持ちのよい作品ではないと思うんですが、おっさんの激白はある意味的をついていて、
この世の不条理を語り尽くしてる感があります。

驚きの衝撃映像もあるのですが、その後に不思議な高揚感が待っていて、ここではからずも泣いてしまいました。
「カノン」のメロディってなんて優しいんだろう。きっとそう思うはず。

全ての人にお薦め出来る作品ではないけれど、緊張感と不条理感と、ある種の愛を感じ
グチャグチャの精神状態になってみたい時にはお薦めです!  なんだそりゃ^^;



★★★*☆