しまんちゅシネマ

映画ノート

4ヶ月、3週と2日


2007年(ルーマニア)監督:クリスティアン・ムンジウ出演:アナマリア・マリンカ/ローラ・ヴァシリウ/ヴラド・イヴァノフ/アレクサンドル・ポトチェアンルミニツァ・ゲオルジウ/アディ・カラウレアヌ【ストーリー】1987年。官僚主義がはびこり、人々の自由が極端に制限されていたチャウシェスク独裁政権末期のルーマニア。大学生のオティリアは、望まない妊娠をした寮のルームメイト、ガビツァから、違法中絶の手助けを頼まれる。手術当日、オティリアは恋人からお金を借りると、ガビツァが手配したはずのホテルへ向かうが、そんな予約はないと門前払いされてしまう。やむを得ず別のホテルを探すオティリア。さらに、体調のすぐれないというガビツァに代わり、約束の男ベベも彼女が迎えに行くことに。無愛想なベベは、やって来た女も違えば、ホテルの場所も変更になり警戒心を募らせる。やがて、2人が用意した金が足りないと知ると、怒りも露わにその場を立ち去ろうとするのだったが…。

黒く塗りつぶせ! ロンドン・タイム誌100選

■感想
チャウシェスク独裁政権末期のルーマニアでは堕胎は禁止されていたんですね。
これは、その時代に思わぬ妊娠をしてしまった大学生が、闇のルートで堕胎を敢行するお話。

ルームメイトである主人公オティリアがその手助けをすることになるのですが、、
堕胎をすることも、助けることも、勿論闇で堕胎を施術することも罪。

ホテルの部屋を貸り、堕胎医を雇い、実行する。
これらの行為を非常にスリリングに描きながら、それぞれの登場人物の人間性と社会背景を見せるやりかた、面白いですね。

この妊娠し堕胎をしようとするガビツァが、あまりに自己チュウで共感出来ないといういう感想を聞いていましたので、
さほど驚かずに観ました。彼女は自己チュウというよりも甘い!
所詮大学生、今の時代ならこんなものかなぁという気もしますが、この映画の意図としては、体制の中生き抜こうとするオティリアとの対比のためにこういう甘ちゃんを描いたんでしょうね。
気持ちが良かったのは、闇の堕胎医であるベベがことごとく彼女の甘さを指摘し、非難したこと。
彼の正体は説明されていないわけで、彼がなぜ堕胎を引き受けるのかも不明ながら、彼の言い分は至極妥当。
変かもしれないけど、登場人物の中では一番共感出来る人物でした。

主人公のオティリアはボーイフレンドとの会話から、自分の道は自分で切り開く自立した女性であることが伺えます。
信頼という言葉が幾たびか出て来ますが、ボーイフレンドに対しても信頼は感じていないような。。

勿論ルームメイトにも信頼は感じていない。
それでもルームメイトを助けるオティリアの本意はどこにあったのかは、私には少し理解が難しかったです。

ことがバレればとんでもないことにある。そんな緊張の中、最後までルームメイトの世話をみるものの、、、。

唐突に終ったあのラストを観ていると、二人の関係のその後は心配。


サスペンス要素を含みつつ、この時代の社会背景、国民性なども垣間みることが出来る
興味深い作品でした。

カンヌでパルムドール受賞


★★★★☆