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映画ノート

イントゥ・ザ・ワイルド


2007年(米)監督・脚本:ショーン・ペン原作:ジョン・クラカワー『荒野へ』(集英社刊)出演:エミール・ハーシュマーシャ・ゲイ・ハーデンウィリアム・ハートジェナ・マローンキャサリン・キーナーヴィンス・ヴォーンクリステン・スチュワートハル・ホルブルック【ストーリー】アトランタの大学を優秀な成績で卒業したクリス・マッカンドレス。裕福な家庭で育ち、知性も分別も備えた若者クリスは、ある日全てを捨て、アラスカの荒野を目指すヒッチハイクの旅に出る。

黒く塗りつぶせ!ロンドンタイム誌100選!

■感想
ジョン・クラカワーの小説『荒野へ』を基に、ショーン・ペンが監督・脚本を担当し、
2007年のアカデミー前哨戦で大きな話題となった作品です。

観終えた後に言いようのない感動に包まれ、振り返れば振り返るほどに涙があふれる思いです。

これは実話です。
大学卒業後間もなく、クリス(エミール・ハーシュ)は全てを捨て、アラスカの荒野を目指した‥。
何がクリスを荒野へと駆り立てたのか‥。
妹のナレーションにより徐々に見えてくる、両親、社会への思い、怒りと葛藤がとても痛いものでした。
ショーン・ペンはこれを映画にするにあたり、両親の同意を確かなものにするのに10年の年月を費やしたのだそうです。
両親にウィリアム・ハートマーシャ・ゲイ・ハーデン。言うまでもなく上手いです。


物語りは、ヒッチハイクをしながらアラスカを目指す20ヶ月と、アラスカの荒野で過ごした4ヶ月が交互に描かれます。

パノラマに広がる大自然のなんと大きく、美しく、生きるために生きる生活のなんと過酷なことでしょう。
木の実や野草を食べたり、荒野に棲息する小動物を食べての生活。
徐々にクリスの身体が痩せていくのもリアルで、実際に彼は18キロ以上痩せたそうです。役者魂ですね。



路の途中で出会う傷を抱えた人々との交流は、どれも心に沁みるものでしたが、
最後に出会った老人との出会いは特に感動的。
赦すことと、愛することを教えてくれた彼には泣かされましたね。
この老人を演じたのがハル・ホルブルック
短時間の演技にも関わらずアカデミーの助演男優賞にノミネートされたのも納得の演技、、というよりも存在感!


クリスを演じたエミール・ハーシュはちょっと、レオナルド・ディカプリオに似てません?
実際、映画を撮ることを決めた時には監督のショーン・ペンはクリス役にレオを考えたのだとか。

圧倒的な存在感をもつアラスカの大自然の美しい映像、ゴールデングローブで歌曲賞を獲得したエディ・ヴェダーの音楽も素晴らしいです。

目の前を走り去るムースの大群を見つめ、静かに涙を流すシーンも心に残ります。
物質社会に疲れ、全てを与えられる生活に反撥し荒野を目指したクリス。
たちはだかる自然の、とてつもない大きさを思い知らされ、結果としてちっぽけな自分を知り
温もりが必要なことも知ったのでしょう。終わりに近づくにつれ、表情は柔らかくなっていきましたものね。

クリスの心の軌跡、壮絶な生き方に触れ、人間とは、自然とはと考えさせられる作品。お薦めです。



日本公開は9月です。



★★★★*