しまんちゅシネマ

映画ノート

インディアン・ランナー



■感想
イントゥ・ザ・ワイルド』を観て監督ショーン・ペンに惚れました。
そこで今月の特集の締めとして今日から3日連続でショーン・ペンの監督作品を。

ショーン・ペンブルース・スプリングスティーンのアルバム『ネブラスカ』収録の“ハイウェイ・パトロールマン”という曲に影響を受けて、この曲の中の兄弟の物語を映画にしようと思いついたんだそうで、
映画に登場する兄弟の設定は歌詞のまま。
 
実直に生きるパトロール警官の兄ジョーと、はぐれ者の弟フランク。
対照的な兄弟であるその弟が、ベトナムの戦場から還ってきた。精神を病んでしまった彼は、以前にも凶暴性を増して理由なき凶行に走る。しかし道を踏み外した肉親を見捨てるわけにはいかない兄のジョーは、なんとか彼の心の内を探ろうとするが……。(allcinema)
 
これがショーン・ペンの初監督作品というのが驚きです。
冒頭、雪の荒野で暴走車を追うハイウエイコントロールのパトカー。
激しい追走劇に挿入される音のない荒野の風景、
イントゥ・ザ・ワイルド』を髣髴とさせるこの出だしからすでに痺れる!

温和な家庭人の兄ジョーは、粗野で社会に適応できない弟フランクを憂う。
子供のまま大人になった・・。それだけでは語れない異常な暴力性を家族も本人でさえももてあます。
間逆の性格、間逆の人生。
それでも兄は弟の人生がより良いものであることを願い根気強く弟の再生を助け、
弟もそれに応え、このままうまくやっていけるのかと思った矢先に、
フランクに潜む暴力性が顔を出すんですね。なんともやりきれない。
 
フランクのアウトレイジベトナム戦争の影なのか、
その辺りは語られないものの、『タクシー・ドライバー』に通じるものもあるような。
とにかくフランクの中で瞬間”ポン”と暴力性にスィッチが入るさまが怖い怖い。


瞳の奥に狂気の光を放つヴィゴ・モーテンセンのギラギラした演技は絶品だったけど
これは監督ショーン・ペン自身の姿も重なって見えました。
 
兄弟の父親をなんとおひげのないチャールズ・ブロンソンが演じていて、
これがまた最高なんですね。
実際に妻を亡くして間もない頃の出演だったようですが、
自分の夢も十分に果したとは言えず、やくざな息子をどうすることもできず
果ては妻を亡くしてしまった年老いた男の孤独をひしひしと漂わせてくれました。渋い!
 
ただ、『インディアン・ランナー』の持つ意味合いをイマイチ理解できてない^^;
ただ思うのは理由もなく失われていく命も、新しく生まれる命も
正当防衛の果てに奪われる命も、命の重さは同じなんだろうということ。。

最後の演出もちょっと唐突だったような気もするのは私だけかな。
とはいえ、ショーンの監督としての才能がキラリン
彼の作品もっと観たいぞ~。