しまんちゅシネマ

映画ノート

落下の王国


2006年(インド/イギリス/アメリカ)監督・製作・脚本:ターセム出演:リー・ペイス/カティンカ・ウンタルー/ジャスティン・ワデル/ダニエル・カルタジローン/レオ・ビルショーン・ギルダー/ジュリアン・ブリーチ/マーカス・ウェズリー/ロビン・スミス/ジットゥ・ヴェルマエミール・ホスティナ【ストーリー】1915年、ハリウッド。撮影中の事故で重傷を負い病院のベッドに横たわるスタントマン、ロイ。身体が動かず自暴自棄となり、自殺願望にとらわれていた。同じ病院に入院中のアレクサンドリアは、家族を手伝ってオレンジを収穫中に樹から落下して腕を骨折した5歳の少女。じっとしていられず敷地内を歩き回っていて、ロイの病室へと辿り着く。ロイはアレクサンドリアを呼び寄せると思いつきの冒険譚を語って聞かせる。ロイの語るめくるめく物語にすっかり引き込まれていくアレクサンドリアだったが…。
■感想
ザ・セル」のターセル監督が、構想26年という情熱を注いで撮り上げた感動の物語です。

撮影中、橋から落ち身体の自由を失ったスタントマンのロイ。私生活でも恋人を失い、生きる力を亡くしてしまう。
そんな折、骨折で入院中の少女アレクサンドリアが偶然ロイの病室を訪れます。

利発そうなアレクサンドリアを呼び寄せ、思いつきの冒険ストーリーを話して聞かせるロイ。
でも、ロイの本当の目的は哀しいものでした‥。

物語の大半を占めるのはロイが語る物語の世界。それは総督オウディアスに復讐を誓う5人の戦士たちの冒険物語です。
世界遺産13カ所で撮影されたという、その映像が驚くほどに美しいのですよ。
CGなど一切使わずにこんな風に美しい絵がとれるものなのですね。構成の妙もあり、写真を愛する人には必見でしょう。

この冒険物語と、病室でのロイとアレクサンドリアのシーンが交互に描かれていくわけなんですが、
話しを聞くうちに、少女は登場人物の一人に死んだ父親の姿をかぶせていきます。
物語がクライマックスを迎える頃、少女の一途な思いがロイの心を動かすことになり‥。

アレクサンドリアを演じたカティンカ・ウンタルールーマニア出身の当時5歳の女の子。
3歳で女優になる夢を持ち始めたという彼女、撮影当初殆ど英語を話すことが出来なかったというのにも驚きますが、特別美人ではないのに、そのひたむきな演技に魅了され泣かされました。
天才ってこういう子のことを言うんだろうな。。



主人公ロイを演じたリー・ペイスはジョンキュー似の俳優さん。
物語の登場人物として登場する彼のスタイルのいいこと。「グッド・シェパード」にも出てたのね。



正直、奇想天外な作り話を駆使したこの作品、美しい映像だけで評価出来るのもなのかなぁなどと思いながら観てたんですが、少女の思いがロイに伝わる終盤になって、一気に心を揺すぶられるのです。
シネマパラダイス的なエンディングにも感動。

果たして自分は精一杯生きて来たのだろうか、と誰もが自問したくなるかもね。

人間落ちるところまで落ちたら、あとは這い上がればいいんだよ。
そんなメッセージを受け取りました。


いいですよ。



★★★★☆