しまんちゅシネマ

映画ノート

ミッシング


1982年(米)監督・脚本:コンスタンタン・コスタ=ガヴラス出演:ジャック・レモンシシー・スペイセク/ジョン・シーア/メラニー・メイロン/チャールズ・シオッフィデヴィッド・クレノン/ジョー・レガルブート/リチャード・ヴェンチャー/ジャニス・ルール【ストーリー】南米チリに滞在していたアメリカ人チャールズが行方不明になった。父親のエドワードは、早速現地に飛び、チャールズの妻と共に調査を開始する。そして、チャールズの失踪には、クーデターが深く関わっていることが判明していく……。
■感想
73年9月南米チリで起きたクーデターの最中、失踪したアメリカ青年の事件をモデルに描く社会派ドラマです。

チリのクーデターについては何の知識も持たないままに観てしまいました^^;
映画が終わり、Wikipediaで確認した情報はこちら

このクーデターで政権を握った軍部はすさまじい「左翼狩り」を行い、多くの左翼系市民が虐殺されたのですね。

そんな中、アメリカ人青年チャールズはなぜ標的となったのか。
好奇心旺盛な性格や、正義に立ち向かおうとする気性があだとなり、かつ誤解を招く仕事に関与していたりと、偶然、不運と言える状況も重なったわけですが、「アメリカ人なんだから大丈夫」というおごりの気持ちも不運を招くことに繋がったのでしょう。

果たしてチャールズは生きているのか。。
アメリカから駆けつけたチャールズの父親同様に、チャールズの生存にかすかな望みを抱いてはみるものの、集められる情報からは楽観的な兆しはいっさい見えてきません。
父親、妻の焦燥感を助長するのは、あいまいな大使館の態度。。そしてそこに見え隠れするのは、アメリカ政府の関与です。

こうした社会派な背景を描きつつ、ドラマは長い間確執のあった親子関係にも迫ります。
地位も財産も築いてきた父エドジャック・レモン)は奔放な生き方を実践する息子のことを理解出来ず、妻であるベス(シシシー・スペシク)にも良い印象を抱いていなかったのです。

迎えるベスにいら立ちと嫌悪感をぶつけるエドでしたが、共にチャールスの行方を追ううちに、心の中では息子を深く愛していたことに気付き、ベスに大きな信頼を寄せるようになります。
二人の関係が変化していく様子は心地よく、ジャック・レモン、シシー・スペシクは流石の演技ですね~。


これは実話を基にした作品ということで、実際にこのアメリカ人青年の父親は、大使館員はじめ、キッシンジャー国務長官を含む公人11人を告訴していますが、死体の返還に7ヶ月を要したことから証拠不十分ということで却下。
虚しいですね。。

サスペンスフルな展開と、重厚な人間ドラマに観応えたっぷりな本作は、カンヌでグランプリを受賞しています。


★★★★☆