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映画ノート

スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする


2002年(フランス/カナダ/イギリス)監督:デヴィッド・クローネンバーグ出演:レイフ・ファインズミランダ・リチャードソンガブリエル・バーン/ブラッドリー・ホールリン・レッドグレーヴ/ジョン・ネヴィル/ゲイリー・ライネック/フィリップ・クレイグ【ストーリー】ロンドンのとある駅に降り立った一人の男。彼デニスは精神療養施設を退院させられ、20年ぶりに故郷へ戻ってきた。デニスは、社会復帰ができるまでのあいだ患者を預かってくれるという古びた家へと向かう。ウィルキンソン夫人に迎えられ、さっそく部屋をあてがわれたデニスは鞄を開け、中から1冊のノートを取り出した。そして、何事か書き付け始める。少年時代、クモの話が大好きだったデニスは、母親から“スパイダー”と呼ばれていた。配管工の父はいつもパブに入り浸っていた。やがてその父はパブの娼婦イヴォンヌと不倫の関係になってしまう…。

プチプチ・サイコ祭り第一弾!サイコじゃなかった^^;『スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする

■感想
この映画をサイコ祭りのトップに持って来たのは、実は失敗だったような。
というのは、サイコ=サイコパスと捉えるなら、この映画は厳密にはサイコスリラーに属さないからです。
実際今回あげたリストにも入ってません^^;
でもサイコスリラーを異常心理スリラーと広義にとれば問題ないかな。

サイコパスの定義は実はあいまいなところがあるようですが、まず「反社会性人格障害」の代名詞とも言われ、
社会的に有害か否かの判断を伴います。そして学術的な精神障害者に属さないらしいのですが、本作の主人公はしっかりその精神障害者なのです(汗)。すみませんね~。のっけからこんな調子で^^;

それでもデヴィッド・クローネンバーグのスリラーということで、楽しみに鑑賞した本作。
主人公のデニスが少年時代の記憶をたどり、哀しい過去に対峙する戦慄のサスペンス・スリラーでした。

精神病院を退院後、故郷に戻り、社会復帰までの期間患者を預かってくれるという施設に赴く主人公デニス(レイフ・ファインズ)。


物語りは施設に暮らすデニスと、彼の記憶の中の少年時代のシーンが交互に描かれるのですが、
奇妙なのは、少年時代のシーンの片隅に常に現在のデニスが佇み、一部始終を見つめていること!

いや~、斬新。
母親の死を悲しみ続ける主人公が、少年時代に遡り、記憶の中の真相に対峙するという作品なんですね。
少年のデニスは何を見たのか。

全てが明らかになったとき、そのあまりに哀しく、衝撃的な結末に胸が痛みました。

長い間心に闇を持ち続け、朽ち果てるように生きているデニス。
もしかしたら彼は何度もこの幻想を繰り返しながら生きているのか。
少年の自分から逃れる事はできないのかもしれない、、。そんな気がして不憫でした。
精神を病む事の哀しさ、その自分と対峙する事の厳しさを感じますね。


主人公を繊細に演じあげたレイフ・ファインズはお見事。
少年を演じた子役もちょっと似た感じでいいです。
父親役にガブリエル・バーン、母親にミランダ・リチャードソンなど、脇も渋い。


クローネンバーグは、異形なものをその視線から描き上げる事に長けた監督だと思うのですが、
本作は精神障害者の内面にスポットを当てているという点で、かなりのチャレンジだったのではないかな。
グロさは控えめですが、戦慄のラストに向け、デニスとともに真実を求め駆け抜けた。そんな作品でした。


ちなみに、映画の中で蜘蛛は登場しませんので、蜘蛛嫌いの方ご安心ください。
登場するのは蜘蛛の巣のように張りめぐらされた凶器‥というべきかな。


面白いです。




★★★★☆