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映画ノート

M


1931年(ドイツ)監督:フリッツ・ラング出演:ペーター・ローレ/オットー・ベルニッケ/グスタフ・グリュントゲンス/エレン・ウィドマン/インゲ・ランドグット【ストーリー】ベルリンで、幼い少女ばかりを狙った殺人が繰り返される。警察の必死の努力にも関わらず犯人のめどは立たず、市民や暗黒街のギャング達は自分自身で犯人を捕まえる事を思い立つ。手がかりはないかに思えたが、子供が連れ去られるときに、いつも同じ口笛が聞こえることに気づいた盲目の売り子の証言により、一人の男に焦点が絞られ、チョークで「M」(殺人者-Murderer)のマークを付けられた男は追い詰められてゆく。

プチプチ・サイコ祭り第1弾2/5 カルトな傑作『M』

■感想
デュッセルドルフの吸血鬼と異名を持つ、実在した連続殺人犯ピーター・キュルテンをモデルに描く、
ドイツの巨匠フリッツ・ラング初めてのトーキー作品です。

幼児連続殺人事件の犯人を探し出し捕まえる。
そのストーリーの中に、犯罪者の心理、被害者の心理、犯罪者を裁くものの心理などを見事に描きあげた傑作ですね。

ベルリンで少女連続殺人事件が起こり、容疑者から新聞社に声明文が届く。
面目丸つぶれの警察は必死の捜査劇を繰り広げるが、犯人を見つける事ができない。

しらみつぶしの警察の捜査に最も迷惑をこうむる暗黒街の面々が、警察に秘密裏に犯人を見つけ出そうと組織を立ち上げてしまうところが実にユニーク。

街にたむろする浮浪者に担当区域を割りあて、怪しきを追跡させるという作戦が功を奏し、見事に犯人を探し当てるのですが、その時犯人の背中に「M」という文字をチョークで印し、目印にするのですね。Mは殺人者という言葉の頭文字。



この作品の面白いのはまず、犯人は自分たちの隣にいるかもしれないという考えからくる民衆心理。
子供に声をかける男を見かけるや、人々は疑いの眼差しを向けます。誰もが犯人に見えてくるわけです。

犯人が少女を誘拐するシーン。影や口笛だけで姿が見えないところが実に恐いのです。

中盤ようやく正体を現す犯人。
小太りにギョロ目の風貌のペーター・ローレが実に不気味で異常な雰囲気を漂わせるのですよ。

浮浪者に追われビルの地下倉庫に追いつめられていく様子もスリリングでした。

しかし圧巻なのはラスト。暗黒街の面々による人民裁判の場で犯人がその犯罪心理を吐露するシーンは鳥肌もの。
罪を冒したもの、罪を裁くもの、子供を失った親の心理などを鋭く描いている点にも驚きます。


前半の警察の捜査の状況に、やや眠気が差してしまうものの、中盤以降はグイグイと引き込まれましたね~。。
観応えのある傑作だと思います。


★★★★*