めぐりあう時間たち

２００２年（米）監督：スティーヴン・ダルドリー原作：マイケル・カニンガム出演：ニコール・キッドマン／ジュリアン・ムーア／メリル・ストリープ／スティーヴン・ディレイン／ミランダ・リチャードソン　　ヴァネッサ・ベル／ジョージ・ロフタス／ジョン・Ｃ・ライリー／トニ・コレット／エド・ハリス／アリソン・ジャネイ　　　クレア・デインズ／ジェフ・ダニエルズ【ストーリー】1923年、ロンドン郊外のリッチモンド。作家ヴァージニア・ウルフは病気療養のためこの地に移り住み、『ダロウェイ夫人』を執筆していた。午後にはティー・パーティが控えている…。1951年、ロサンジェルス。『ダロウェイ夫人』を愛読する妊娠中の主婦ローラ・ブラウンは、夫の望む理想の妻を演じることに疲れながらも、夫の誕生パーティを開くためケーキを作り始める…。2001年、ニューヨーク。『ダロウェイ夫人』の主人公と同じ名前の編集者クラリッサ・ヴォーンは、親しい友人でエイズ患者の作家リチャードが栄えある賞を受賞したことを祝うパーティの準備に取りかかっていた…。

■感想

祝オスカー・ノミネート！　監督賞候補　スティーヴン・ダルドリー監督！

今日は『愛を読むひと』で監督賞にノミネートされたスティーヴン・ダルドリー監督の代表作。

本作はピュリッツァー賞を受賞したマイケル・カニンガムのベストセラー小説の映画化で
ヴァージニア・ウルフの小説『ダロウェイ夫人』に関係する３人の女性たちのある一日を綴った作品です。

３人のある一日が、時と場所を越えて絡み合う。。　
不思議な因縁を感じるストーリー構成が面白い作品でした。

『ダロウェイ夫人』を執筆中のヴァージニア・ウルフ（ニコール・キッドマン）は精神を病み、幻聴や頭痛に悩む毎日。
レズビアンに目覚めた彼女は、自分の本当の感情を殺して生き続けることにも疑問を感じていたようです。

そんなウルフの綴る『ダロウェイ夫人』を愛読するローラ（ジュリアン・ムーア）も、同じく結婚生活を続けることに疑問を持つ女性。詳しく語られてはいないものの、ローラにもレズビアンを感じます。

驚くのはメリル・ストリープが演じたクラリッサ（彼女もレズビアンです）の設定です。
『ダロウェイ夫人』について全然知らなかったので、映画を観た後に調べたんですが、メリルのクラリッサと全く同じように、パーティーを準備し、ある「死」と遭遇するという一日を過ごす物語なんですね。

なんと大胆なストーリー構成！！　
そして、さらに凄いのは小説の主人公に通じることがあるというキャラクター設定だけでなく、
ある時点で世界が繋がってしまうこと。これには唸りました。

ジュリアン・ムーアのエピソードでは息子ちゃんが可哀想でたまりませんでしたね。
子供ながらに何かを感じ取り、母親が今にも消えてしまうのではと怯えながら過ごすなんて。。

後半になってある接点に気付いた時には思わず「あ！」と声を上げちゃいましたよ。

自らの性や本質を求めるが故にもがき苦しむ人々。苦しみ抜いてあるものは死を選び、あるものは生きる道を見出す。
葛藤の中、生と死を見つめ続けたウルフの人生、そのものが投影された文学的な作品だと感じました。

付け鼻で本人に似せ、鬱々とした演技でウルフを演じたニコールは、これでオスカーゲットです。

★★★★☆

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