しまんちゅシネマ

映画ノート

息子の部屋


2001年(イタリア)監督:ナンニ・モレッティ出演:ナンニ・モレッティラウラ・モランテジャスミン・トリンカ/ジュゼッペ・サンフェリーチェシルヴィオオルランド/クラウディア・デラ・セタ/ステファノ・アコルシ/ソフィア・ヴィジリア【ストーリー】精神科医のジョバンニは、妻パオラ、娘のイレーネ、息子のアンドレアと幸せに暮らしていた。が、ある日、アンドレアが事故で死んでしまう。
■感想
息子を亡くした家族の葛藤と再生を描き、カンヌでパルムドールを受賞した作品です。

監督・主演はイタリアのナンニ・モレッティ
全然知らない方でしたが、all cinemaの解説によると“愛すべきマイナー”なんだとか。

父親ジョバンニ(ナンニ・モレッティ)は精神科医。美人の母に健やかで素直な子供たち。
一見仲の良い、幸せな一家に見えながら、案外互いのことを理解していないところがありそう。(ま、普通でしょうけど)

それは、精神科医として働く父親の仕事ぶりからも窺えます。
彼のセラピーは、どこか冷たい。勿論精神を病む患者に、感情移入し入り込んでしまっては治療にならないのだろうけど、
正論で諭そうとするジョバンニの治療に、心の満足を得られない様子の患者たちの姿に、ジョバンニ自身の人間に対する目線を感じずにはいられません。

そんなある日、愛する息子が突然の事故で死んでしまう。。
家族の哀しみは大きく、ジョバンニも「あの時、こうしていれば」という後悔の念に苛まれます。
できることなら時間を元に戻したい。
人は人生の中で、幾度かそう思うことがあるはず。

哀しみに暮れる家族が、いつしか結束を失い、その関係がぎくしゃくしてくる様子は痛々しいものがありました。

後半、壊れる寸前の家族を再生に向かわせたあること。
それは、失った時間を悲しむのではなく、そこにあった生に感謝することを家族に教えるんですね。
息子はそこで確実に生きていた。そう感じたとき、息子の部屋も違って見えてきます。

長いドライブを終え、海辺にたつラストの清々しさ。
言葉にならない感動がありました。

静かながら、家族の心の機微を丁寧に描いた秀作でした。

ナンニ・モレッティって、デ・ニーロと『リトルミスサンシャイン』の時のゲイのカレルさんを足して2で割った感じw




★★★★☆


今月はカンヌの過去の受賞作品にも注目していきます。