しまんちゅシネマ

映画ノート

奇跡の海


1996年(デンマーク)監督:ラース・フォン・トリアー出演:エミリー・ワトソンステラン・スカルスガルド/カトリン・カートリッジ/ジャン=マルク・バールジョナサン・ハケット/エイドリアン・ローリンズ/サンドラ・ヴォー/ウド・キア【ストーリー】プロテスタント信仰が強い、70年代のスコットランドの村が舞台。ベスは、油田工場で働くヤンと結婚した。彼女は、仕事のために家に戻れない彼を愛するあまり、早く帰ってくるよう神に祈る。するとヤンは工場で事故にあい、願い通りに早く戻ってきた。だが回復しても寝たきりの上に、不能になっていた……。やがてヤンは、他の男と寝るよう勧め、ベスもまた、夫を愛するがゆえに男たちを誘惑してゆく。
■感想
ドッグヴィル』を途中リタイア中の私には、初ラース・フォン・トリアー作品でした。

戒律の厳しいカルヴィン主義が支配するスコットランドの村で、敬虔な信者のベス(エミリー・ワトソン)が、
油田で働くヤン(ステラン・スカルスガルド)と結婚するところから物語は始まります。

ひと時もヤンと一緒にいたいと願うベスが、ヤンが早く帰ってくるようにと神に祈った直後、
ヤンは事故に巻き込まれ下半身不随に。
愛するベスを抱くこともできなくなったヤンは、ベスに他の男と関係を持ち、その様子を語ってくれるようにと頼みます。
それが二人の愛を繋ぐ方法だと。

はぁぁ、複雑ですよね。
性的機能を失った夫の苦悩はわかるのだけど、妻に他の男と寝ることを勧めたのは何故だったんだろう。
まだ若い妻のことを思ってのことなのか、自分の性的欲求を満たすためだったのか。
なんて、そんなことを特定しようとする映画じゃないんだとは思うんですが。



ヤンの要求に驚き、最初は拒否していたベスが、なんとかヤンの要求に応えようとしたとき、
容態の悪化するヤンの状態が一時回復を見せると言う偶然(?)が重なり、
ベスはますます自分の行動が夫の命の鍵となると信じてしまうんですね。

宗教心をもたない私には、神と対話するベスの様子は異様でしかなく、ちょっと引く部分もあったのだけど、
エミリー・ワトソンのセンセーショナルな演技は印象的で、作品にリアルな生々しさを与えていました。

結婚式の時にも鳴らなかった教会の鐘。

鐘の音が響き渡るラストシーンでは、奇跡は本当に起こったのだと、、鳥肌が立つがすると同時に
ベスのあまりにも無垢で一途な愛を思わずにはいられず、涙があふれてしまいました。

あまりにも究極だけど、あまりにも特異であるため、この作品は好みが別れるところでしょうね。
本作は『イディオッツ』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』とで"Golden Heart"3部作ということになるようです。


監督はカンヌで審査員特別グランプリを受賞しています。


★★★★☆