トウキョウソナタ
2008年(日本)監督:黒沢清出演:香川照之/小泉今日子/小柳友/井之脇海/井川遥/津田寛治/児嶋一哉/役所広司【ストーリー】佐々木家はトウキョウに暮らす一見ごく普通の4人家族。平凡なサラリーマンの父・竜平は、家長としての自負を持ち、家族のために懸命に働いてきた。ところが、ある日リストラであっさり会社をクビになってしまう。その事実を家族に伝えられず、毎朝スーツで家を出ては、公園などで時間をつぶす竜平。母・恵は、せっかくドーナツを作っても誰にも見向きもされないなど、やり場のない不満と虚無感を募らせる。一方子どもたちも、大学生の長男・貴は、突然アメリカ軍への入隊を志願し、小学生の次男・健二は家族に内緒でピアノ教室へ通い続けていた。すっかり家庭崩壊への道を突き進む佐々木家だったが…。■感想
父親の突然のリストラをきっかけに、不協和音を奏で始める一家の行方を描いた
カンヌ映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞した作品です。
監督の作品は、ホラーでなくてもどこかホラーっぽいのね。
町の公園で長い列をなして、食事の配給を受けるホームレスや職を失った人々。
これはアメリカのホームレス用シェルターの光景として、映画の中では目にする風景だけど、日本ではないでしょ。
これが公開された時には、多くの人がそう思ったはず。
これはアメリカのホームレス用シェルターの光景として、映画の中では目にする風景だけど、日本ではないでしょ。
これが公開された時には、多くの人がそう思ったはず。
でもでも、不景気に拍車がかかりリストラが進み‥なんとこれそっくりの状況をニュースで見ることに(*_ _)
公開時には「人ごと」と、軽く見て行た人の中にも、派遣村に集まるはめになった人もいるかもしれない。
公開時には「人ごと」と、軽く見て行た人の中にも、派遣村に集まるはめになった人もいるかもしれない。
そういう意味で、この作品は暗く沈みゆくトウキョウ=ニッポンの姿を暗示するような
何か不安でたまらない気持ちにさせられるのです。
何か不安でたまらない気持ちにさせられるのです。
単に音楽がないとか、無表情な登場人物や白っぽい画面とか、そんなのだけではないホラー感覚なのですよね。
さて、映画はリストラにあった佐々木家と同時に、佐々木の友人黒須の家にもストーリーが及びます。
佐々木よりも4ヶ月前にリストラにあった黒須(津田寛治)。
佐々木と同じく家族にリストラのことを言い出せないまま、公園で時間をつぶす彼は
佐々木に失業者としての生活心得を伝授するという、コミカルでシニカルな役割を演じるのですが、
彼の一家に起こるある出来事をきっかけに、映画の重さがただ事ではないと思わせます。
佐々木よりも4ヶ月前にリストラにあった黒須(津田寛治)。
佐々木と同じく家族にリストラのことを言い出せないまま、公園で時間をつぶす彼は
佐々木に失業者としての生活心得を伝授するという、コミカルでシニカルな役割を演じるのですが、
彼の一家に起こるある出来事をきっかけに、映画の重さがただ事ではないと思わせます。
一度、見栄や権威という殻をかぶってしまった人間は、たとえ冷たい海に放り出されても、その殻を脱ぎ捨てる勇気がないんだよね。黒須に共感する人はきっと大勢いるでしょう。
でも人間なるようになるさ、ってある意味開き直りも大切。
黒沢監督って「こうあるべき」と人を引っぱっていくタイプの人では決してない気がするけど、
こんな暴力オヤジはいやだ~、こんな家だったら妻もいつもつまんないだろなだったり
父親がハシをつけるのを待ってから、食事を始める家族の風景に、「マジ?」と思いながら微笑ましく思ったり。。
こんな暴力オヤジはいやだ~、こんな家だったら妻もいつもつまんないだろなだったり
父親がハシをつけるのを待ってから、食事を始める家族の風景に、「マジ?」と思いながら微笑ましく思ったり。。
現実的、非現実的、両方の描写を上手く操りながら人間関係や心理を描き出すとろこにセンスを感じますね。
BGMが一切なかったこともあって、唯一の音と言えるこのピアノの音色に何故か泣けちゃいましたね。
途中、食事シーンがたくさん出て来たけど、
佐々木家みたいに、どんな状況であっても家族で一緒に食事が出来たら、きっとそれだけで幸せ。
そんなことを思った作品でした。
佐々木家みたいに、どんな状況であっても家族で一緒に食事が出来たら、きっとそれだけで幸せ。
そんなことを思った作品でした。
★★★★☆