しまんちゅシネマ

映画ノート

偶然の旅行者


1998年(米)監督:ローレンス・カスダン出演:ウィリアム・ハートジーナ・デイヴィスキャスリーン・ターナー/エイミー・ライト   ビル・プルマン/ロバート・ゴーマン/デヴィッド・オグデン・スタイアーズ/エド・ベグリー・Jr【ストーリー】子供の死のショックから立ち直れずにいる旅行ガイドブックのライターをする主人公が、妻と別居などを通して、やがて出会うペットショップの訓練師との恋に落ちていく姿を描く。
■感想
主人公のメーコン(ウィリアム・ハート)はガイドブックのライター。
彼は一年前に12歳の一人息子を亡くし、ショックから立ち直れずにいるのですが、
そんな矢先、妻のサラ(キャスリーン・ターナー)から離婚を言い渡されてしまいます。

残された家で、愛犬との暮らしが始まるのだけど、これが哀愁。
きっと亡くなった息子ちゃんは、この犬をとっても可愛がっていたんでしょうね。
ご主人様を亡くしたワンちゃんも、メーコンと同様に寂しさとストレスの塊だったんではないかな、
歯を剥き出しにして唸る、吠える。あげくはメーコンに噛み付くと荒くれものになっちゃってます。

そんなワンちゃんの調教を申し出たのは、偶然預けることになったペットショップに働く
調教師のミュリュエル(ジーナ・デイヴィス)。。



ジーナ演じるミュリュエルが派手でねw しかも強引。 
自分の殻に閉じこもりがちのメーコンには、なんだか疎ましい存在だったんだけど
彼は次第にミュリュエルに惹かれていくんですね。

ところが妻のサラがやり直そうと言って来た。
さてさて、メーコンはどうするでしょう  というお話です。


子供を亡くした夫婦は離婚率が高いというのを聞いたことがあります。
喪失感から、殻に閉じこもり、夫婦の会話も少なくなって心が離れるのか、
子供のみに関心がいきすぎて、互いを思いやる心を忘れていることもあるかもしれない。

哀しみを癒し合う存在となれればいいのだけど、互いにその役割を負うには荷が重すぎることも多いのでしょう。

そんなメーコンを、哀しみから開放してくれた女性がミュリュエルだったんですね。

旅行ガイドブックのライターでありながら、実は方向音痴という設定は
行き先が見えず、うろちょろしてしまうメーコンの恋の行方を示唆しているかのよう。

自分のガイドブックに書いてあるように、準備万端に整えたはずの旅行カバンを、途中で路に置いてきちゃうあたり
それまでの価値観を捨て、殻を破って新しい未来に向け足を踏み出すメーコンを感じました。

息子がどんな顔だったか覚えてないけれど、最後に出会った少年はきっと息子ちゃんに似てたんでしょうね。
息子に似た少年が引き合わせてくれたとも思えるラストシーンは
往年のラブストーリーのシーンのように、静かながらドラマティックで、とっても素敵でした!

この作品でジーナ・デイヴィスアカデミー賞助演女優賞を受賞。
私はワンちゃんに助演ワンワン賞をあげたかったです。
個性的な共演者の存在は、人にはそれぞれ生き生きと輝ける場所があるんだよとおしえてくれます。
いい作品でした。


★★★★☆