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映画ノート

ヒトラー ~最期の12日間~


バスターズと一緒にKill Nazis!9本目 『ヒトラー ~最期の12日間~』

2005年(ドイツ/イタリア)監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル出演:ブルーノ・ガンツアレクサンドラ・マリア・ララユリアーネ・ケーラートーマス・クレッチマン   コリンナ・ハルフォーフ/ウルリッヒ・マテス/ハイノ・フェルヒ/ウルリッヒ・ノエテン/クリスチャン・ベルケル   ミハエル・メンドル/マティアス・ハービッヒ
■感想
いよいよヒトラー特集もクライマックス。
本作はヒトラー最期の12日間を描いた作品です。
監督は『es[エス]』のオリヴァー・ヒルシュビーゲル

冒頭、一人のおばあちゃんの独白から始まります。
彼女こそが1942年からの3年間、ヒトラーの個人秘書を務めたトラウドゥル・ユンゲだったんですね。
この個人秘書の視点を通すことで、ヒトラーの知られざる側面が浮かび上がることに・・・。

第二次大戦も佳境を迎えた1945年、ドイツ軍は連合軍に追い詰められ、
大砲の音の響く中、ヒトラーは側近たちと首相官邸の地下要塞へ潜ります。

この段階でもまだ、ヒトラーは戦闘の指示を出すのですね。しかしそれは、彼の地図上でのみ可能なこと。
闘いを指揮する司令官、軍の要人の殆どはなす術もないことを知っている

敗退をみとめ降参することを申し出るもの、ヒトラーの指示に従おうとするもの、ひたすら任務を全うする医師・・・
ヒトラーだけでなく、彼を取り巻く側近たちやその家族が、最期をどのように締めくくるべきかを
もがきながら決断する12日間。

22歳でヒトラーの秘書となったユンゲにしてみれば、彼の穏やかで優しい側面しか知らず
ヒトラーをひたすら信じていたんですよね。
そんなユンゲも、ついにはヒトラーが冷静さを失っていく姿を目の当たりにすることに
1000年も続く帝国を作り上げることを夢見てきたヒトラー
その夢が叶わなかったのは、部下たちが、そして市民さえも自分に従わなかったから、、
自分は裏切られたのだと怒鳴り散らす姿は、あまりにも哀しい独裁者の姿でした。

最期まで彼はユダヤ人を排斥したことを誇りに思うと言ってるわけで、勿論同情の余地などないのだけど。。


なんと言ってもヒトラーを演じたブルーノ・ガンツの上手さには驚きました。
秘書たちに向ける優しいまなざしは、ガンツらしいところだったけれど
ヒトラーの独特のアクセントでまくしたてる狂気の姿には、どこにも普段のガンツをみることはできません、

パーキンソン病に冒されたヒトラーを演じるために、専門病院で患者を見て研究したとあって
背中を丸め、左手を振るわせながらの演技もお見事。



市街戦を自発的に闘う子供たちの栄誉を称え、自ら勲章を与える姿をを見ても
こうして「頑張った」とほっぺをキュッとされたら、誰もがヒトラーのために身を捧げたくなるのではないか
独裁者と呼ばれる人にはやはり特別のカリスマ性もあったのだろうな、、
ガンツの素晴らしい演技から、そんなことも感じました。



映画の終わりは、冒頭のおばあちゃんの独白に戻るのですが
その独白の中で印象的だったのが、ユンゲが自分は『白バラの祈り』のゾフィーと同じ歳と語る言葉。
そしてゾフィーが処刑された歳に自分が秘書になったのだということ。

何も知らずにヒトラーに仕え、その間ユダヤ人の虐殺のことすら知らなかったことを
戦後彼女はどれだけ悔やんだんでしょうね。切ないラストでした。
若きユンゲを演じたアレクサンドラ・マリア・ララの美しさと、純粋なまなざしが印象的でした。

戦闘シーンの迫力など、映画的にもかなり見応えがあり、人間的な一面と狂気の両方から
ヒトラーを知ることが出来たのも良かった。
共演者の演技も素晴らしい。秀作ですね。

さて、ヒトラーはついに死んでしまったけれど、特集的にもう一本観なければいけないものが。
Guess what?   


★★★★*