しまんちゅシネマ

映画ノート

プレシャス


2009年(米)監督:リー・ダニエルズ出演:ガボーレイ・シディベ/モニーク/ポーラ・パットンマライア・キャリーレニー・クラヴィッツ
■感想
サンダンス映画祭でグランプリトロント国際映画祭で観客賞を受賞し話題となった『プレシャス!』観てきました。
サファイアによる小説『プッシュ』を映画化した作品です。

80年代のニューヨーク・ハーレム。
冒頭、16歳の太めの高校生プレシャスが授業中校長室から呼び出しをくらいます。
「あなた妊娠してるの?」
プレシャスの2度目の妊娠が発覚し、プレシャスは退学を余儀なくされます。

プレシャスにとって学校なんてつまらない場所に過ぎないんだけど、もっと悲惨なのは家での暮らし。
母親は暴力を振るうし、プレシャスを妊娠させたのは父親だったり母親のボーイフレンドなんですね。
誰も好んでこんな家に生まれてこないよなぁ。



道を歩けばその容姿からバカにされることもあるけど
自分なんて無に等しい。
時には死んでしまいたい気にもなるけど、死に方も知らないし。。

なんとも辛いお話。と思うのだけど
救いなのは、プレシャスの本質は普通の16歳の女の子だということ。

彼女なりにお洒落もするし、恋にも興味あり
有名なスターになってサインに応える姿を夢想してみたりw
学校の担任は自分に気があると思ってるし(笑)
このポジティブさがなかったら、きっと彼女は潰れていたに違いない。

家庭内暴力、虐待、貧困など、プレシャスを取り巻く環境は目を覆うほど悲惨なものなんだけど
映画はプレシャスの妄想映像(笑)なんかも挿入し、時にはププっと笑ってしまうユーモアも
盛り込んでるので、意外にも暗くならずに観れてしまうのですよ。

そしてプレシャスの運命を変えるのは、落ちこぼれ専門の学校みたいなところで出会った教師の存在。
愛と教育で人は救われるんですね。

プレシャスを演じるのはオーディションで選ばれたというガボーレイ・シディベ
内に怒りを秘めたような、孤独な姿は怖い感じさえするけど、妄想の姿は案外可愛いw
新人とは思えないほど、プレシャスを演じ切りました。

どうしようもない母親を演じるモニークはコメディアンだそうだけど、オスカー助演有力候補。
教師を演じるポーラ・パットンの美しさも印象的。

ソーシャル・ワーカー役のマライア・キャリーなんて、スッピン過ぎて最初誰か分からなかったわw


教育や社会保障など考えさせられることも多いですが、プレシャスが成長していく姿には感動します。
何よりも自分の子供に目一杯の愛を与えようとするところには大きく心を動かされました。
映画の中でプレシャスが泣くのはたったの一回。
どうして自分が・・・と涙を流す姿には流石に泣けました。

虐待を繰り返す母親が内に秘めていたものが明らかになるシーンは虚しさを感じますが
彼女も愛に飢えた悲しい女性だったんですね。
周囲の愛によって、愛することも知っていくプレシャスとは相対的な描かれ方でした。

プレシャスにはまだまだ試練が待ち受けているけど、プレシャス頑張れ!と応援したくなります。
愛すること、そして愛されることの大切さをしみじみと感じる素晴らしい作品でした。


★★★★*