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映画ノート

野いちご


1957年(スウェーデン)監督・脚本:イングマール・ベルイマン出演:ヴィクトル・シェストレム  イングリッド・チューリン /グンナール・ビョルンストランド / ビビ・アンデショーン  グンネル・リンドブロム / マックス・フォン・シドー 
■感想
随分前にベルイマン特集をするぞ!と思い立ったものの
自分には時期尚早の気がして、一本で頓挫してましたが、
今回いくつかのDVDを持参するにあたり、いつか観ようと思ってた本作もピックしてました。

【ストーリー】
老齢の医師イサク(ヴィクトル・シェストレム )は50年の功績を称えられ、名誉博士号が与えられることになった。その授与式の前日、イサクは自分が死ぬ夢を見る。
浮かない気持ちのまま嫁とともに式に向かうイサクであったが。

イングマール・ベルイマンの代表作。
冒頭から針のない時計や自分の死体など、ホラーのような夢のシーンが登場し
なんとも不気味で、難解な様子に一瞬ひるむものの
観てみると、これは難しい映画でも怖い映画でもなかった。

授与式に向かう旅は、イサクにその人生を振り返らせる。
途中ヒッチハイクで拾った快活な3人の若者のうち紅一点のサラは
かつて自分が愛した女性にそっくり。
しかし、そのサラを積極的な弟に奪われたことは、イサクの人生に暗い影を落としていた。

道中、まどろみの中で見る夢の中
恋人だったサラと再会し、かつて不貞を働いた妻を物陰から見つめる自分の姿を見る。
自分を裏切った恋人や妻、愛情の薄い母親、
けれど、そのどれにも繋がりがあることを、今なら理解することもできる

老人と嫁と若者3人、変な取り合わせの旅だけど
これは老人が人生を回顧し、自分自身を見つめなおす一種のロードムービーであり、
なくしてきたものを修復しようとする過程は
どこか『グラン・トリノ』にも通じるところがあります。

無機質な人生を送っていた老人が
若者たちのくったくない祝福に素直な笑顔を見せるシーンが好き。

長年彼を支えてきた家政婦とのやり取りをユーモラスに描き
イサクの残りの人生は、きっと明るく穏やかなものになると予感させる。
終わってみると不思議な暖かさに包まれる、優しい作品でした。


イサクを演じたヴィクトル・シェストレムは、78歳の高齢で本作が遺作となりました。
駄洒落じゃないですが^^;
優れぬ体調を押しての撮影だったようですが、人生に痛みを感じながらも受け入れ
修復しようとする主人公そのものを演じていて、見事です。
ベルリン金熊賞、アカデミー外国語作品賞受賞



★★★★*