しまんちゅシネマ

映画ノート

ザ・ロード


2009年(米)
監督:ジョン・ヒルコート
出演:ヴィゴ・モーテンセン/コディ・スミット=マクフィー/ロバート・デュヴァル/ガイ・ピアース 
   シャーリーズ・セロン/モリー・パーカー/ギャレット・ディラハント

■感想
コーマック・マッカーシーピューリッツァー賞を受賞した終末期の世界を生きる父と子の物語です。
 
何かの災害に見舞われてから数年経った世の中。
人類は文明をなくし、年々冷たくなる気候のためにもはや植物も生息しない世界。
荒廃した土地を、壊れかけたカートを引き旅をする父と子が主人公。

彼らが恐れるのは飢えと寒さと、泥棒や人を食う人間たち。
差し込まれる回想シーンからみえてくるのは妻の絶望・・・

それでも父は一人息子を守るため、ひたすら南に向かいます。
空き家を探しては食べ物を探し、なんとか生き延び旅をする二人ですが
息子に生き延びる術を教えるために、父親はついに道徳さえ捨てかけます。
『フェーズ6』では、生き残るためにエゴの塊となる人間が描かれ、悪い後味を残しましたが
この映画では、どんな状況でも慈悲の心を忘れない息子の存在が救いです。
 
こんな世界で生き延びる意味があるのか・・と、ひたすら考えさせられる展開がとにかく悲しいので
陽気な映画を好む人にはなんだかなの作品かもしれません。
でも、人間性を失わず生きようとする人々の姿には感動です。

考えたら名前もなかったのだけど、父親にヴィゴ・モーテンセン
深い愛で息子を慈しむ父親が、これほどはまるなんてね。素晴らしいです。
息子ちゃんにコディ・スミット=マクフィ。この子が上手いんですよね~。しかも可愛い。
回想の中で登場する母親にシャーリーズ・セロン
人間はこのままでいいのか?と思わせられる荒涼とした終末世界の映像が素晴らしい。
絶望的な終末期を描き、神の存在を否定しながらも
親子の絆の深さに感動するし、最後には一縷の望みを感じさせるところが気持ちよく、切ないながらも温かい涙を流すことになります。
火を保つ人々・・それは、人間らしさを忘れずに、次の世の中を生きてく人々なんでしょうね。

6/26~日本公開です