しまんちゅシネマ

映画ノート

美しきセルジュ


1957年(フランス)
監督:クロード・シャブロル
出演:ジェラール・ブラン/ジャン=クロード・ブリアリベルナデット・ラフォン/クロード・セルヴァル

フランス映画祭り 5本目  ― シャブロル追悼 その1 ―

■感想
今月は、先月お亡くなりになったクロード・シャブロル監督の追悼をします。
日本には情報もない作品もいくつかあるので、この機会に紹介したいと思ってますが
まずは、ヌーヴェルバーグの幕開けを告げたとも言われる、監督の長編デビュー作から。
 
フランスの片田舎を舞台に、旧友を救おうとする友の姿を描く青春物語です
 
フランスの寒村に、バスが止まり、垢抜けた青年が降り立つ
青年の名はフランソワ(ジャン=クロード・ブリアリ
今はパリに暮らす彼は、結核に罹患したあと、療養のために久しぶりに故郷に戻ったのだった
バスから降りたフランソワの目に留まったのは、同級生のセルジュ(ジェラール・ブラン
「セルジュだろ?」
声をかけてもセルジュはフランソワに気づかない。
酒を飲んでいて、人の判別も出来ないらしい。
将来を嘱望される美しい青年だったセルジュに昔の面影はなかった。
彼はなぜ変わってしまったのか?
 
セルジュのことが気になって仕方ないフランソワは
結婚がセルジュをダメにしたと思い込み、妻と別れることなどアドバイスするんですね。
 
余計なお世話!
お前に何が分かるんだ
それはセルジュだけでなく、村人みんなが思うことでした。
 
都会の人間になってしまったフランソワに村のみんなは冷たい
それは、フランソワが上から目線で故郷を見ていたからかもしれません
都会で暮らすものへの嫉妬もあったでしょう
村から抜け出したくても抜け出せない
閉塞した村は、セルジュそのものでした
 
ところが、セルジュに殴り飛ばされようと、都会に帰れと罵倒されようと
フランソワは諦めない
 
セルジュを救いたいと思うのは高飛車なんじゃね?と思ってみていた私も
終盤のフランソワの執念にはやられました。
そしてラストのセルジュの歓喜の叫びへと繋がるんですね。
 
閉塞した村に取り残される人々の思い
友を、そして故郷を思うものの思いなどが丁寧に描かれ
不思議と胸を打つ作品に仕上がっています。
この作品を撮った時、シャブロルはまだ27歳
 
後に「悪意の作家」と呼ばれる面影はまだあまり感じない、文学的な作品でした。