しまんちゅシネマ

映画ノート

アニマル・キングダム


2010年(オーストラリア)
監督:デビッド・マイコッド
出演:ジェームズ・フレッチェヴィル/ジャッキー・ウィーヴァーガイ・ピアースベン・メンデルソーン
■感想
サンダンス映画祭 ワールド・シネマ審査員賞でグランプリを受賞した作品
オーストラリア、メルボルンを舞台にしたクライムサスペンスです。
 
冒頭、ソファーに腰掛け、ボーっと人気クイズ番組を見ている青年が主人公のジョシュ
と、そこに救急隊員がやってきてオーバードーズの母親に蘇生処置を始めるという
ちょっと驚きのシーンから始まる本作
母の急死に伴い、ジョシュは疎遠になっていた祖母の一家に身を寄せることになりますが、
それは麻薬がらみの犯罪に手を染める犯罪一家だったという話。
 
映画の中の台詞にもあったけれど
子供は周りのやってることを自然に学んでいくんですね。
ジョシュがどうなっていくのかと不安を感じ始めるのだけど
犯罪から身を引き、全うな仕事をしたいと望んでいたおじが警察により射殺されるという
事件が起こり、映画は動きを見せます。 

この映画で、一番の曲者は一家の母親ジェイニン(ジョシュの祖母)でしょうね。
ブロンドの髪に短めのスカートを履き、明るく一家を取りまとめている風でありながら
子供たちが犯罪を犯したお金で生計を維持していることに何の罪の意識もない
しかも刑事を脅したり、自分の行く道をさえぎるものには陰険に脅しをかけるというツワモノ
息子たちには口にキスをする様子もなんだか違和感で、その関係が奇妙です
母親を演じるジャッキー・ウィーヴァー
この役を演じるにあたって、反社会的な人の脳裏を勉強したのだとか。
ジョシュを受け入れる優しい祖母の反面、そのギラギラとした目に異常性をにじませる演技が見事
オスカー前哨戦でもいくつか助演女優賞にノミネートされていますが、納得ですね。

おひげの刑事、ガイ・ピアースは久々に落ち着いた演技。
犯罪一家と警察の攻防は時にショッキングで、スリリングでした。

ジュシュを演じる新人ジェームズ・フレッチェヴィルはこのとき17歳。
大きな体でありながら、中身はまだ子供という、18歳のアンバランスさをうまく表現しています。
衝撃的なラストシーンに暴力の虚しさを感じる反面、
青年の成長と、安堵感を感じるという 複雑な後味を残しました。
 
日本公開はあるのかな?