しまんちゅシネマ

映画ノート

籠の中の乙女


2009年(ギリシャ
監督:Giorgos Lanthimos
出演:Christos Stergioglou/Aggeliki Papoulia/Mary Tsoni/Hristos Passalis
    
■感想
アカデミー外国作品にノミネートを果したギリシャの作品
カンヌのある視点賞を獲得しています。

大きな庭とプールのある郊外の豪邸
でも違和感があるのは、家をめぐらす高い塀
工場を営む父親は、10代の息子と二人の娘にそれなりに裕福な暮らしを提供している。
でもこの一家何か変なんです。
というのも子供たちは塀の外を知りません。
父親が、家族を守るために、完全に外の世界と遮断してるんですね。
 
面白いのは、性を処理することには重きを置いていて
年頃の息子には、会社のガードをしているクリスティーナを雇い性欲を処理させている点。
唯一外に通じる存在であるクリスティーナの出現は、一家に小さな変化をもたらすのですが・・

監督がこの映画を作ろうとしたのは、
結婚した友達に「結婚なんて意味ないよな」的な発言をして顰蹙を買ったという経験から
人は、家族について何かを言われることに反発する。
それは家族がばらばらになることを恐れる故だということを感じ
家族を守るために極端に走ってしまう父親を描くことを思いついたのだそうです。
 
変わった映画でしたね~。
兄弟の会話でところどころ妙な言葉が入って、「あれ?」と思ったら
どうやら教えたくない言葉は違ったものとして教え込んでるからなんですね。
「ママ、ゾンビって何?」と息子が聞くと、「ゾンビっていうのは小さな黄色い花のことよ」と応える母親w
子供が保育園に行き始めたら、色んな悪い言葉を覚えて困るなんて話を良く聞くけど
そうしながらも自分でよいもの悪いものを判断して社会性を取得していくのが普通
でもこの映画の一家は完全に父親にコントロールされているから始末が悪い
 
でも子供にもやはり自我が目覚めます。
同時に、フラストレーションから暴力が生まれます。
シュールでユーモラスな見せ方でありながら、不穏な緊張が走る映画でした。
変わった視点から子供の成長と家族のあり方を描いた作品とも言えるでしょうね。

ちなみにタイトルのdogtoothというのはそのまま犬歯のこと
犬歯が抜けるときが家を出るとき、車の運転を習い始めるときと父親に聞かされていました。
 
一見の価値ありです。