しまんちゅシネマ

映画ノート

ラビット・ホール


2010年(米)
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
出演:ニコール・キッドマンアーロン・エッカートダイアン・ウィースト/タミー・ブランチャード
   マイルズ・テラージャンカルロ・エスポジート/ジョン・テニー/サンドラ・オー
 
■感想
ピュリツァー賞を受賞したデヴィッド・リンゼイ=アベアー著の戯曲を、二コール・キッドマンがほれ込み自らプロデュースした作品だそうです。
監督は『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』で監督・脚本・主演を勤めたジョン・キャメロン・ミッチェル
いや~これは素晴らしかった。

二コールが演じるのは、8ヶ月前に交通事故で幼い息子を失った主婦ベッカ。
夫ハウィ(アーロン・エッカート)とともに、遺族の集う会に出席する日々ですが
そんなグループセラピーはなんの慰めにもならず、ベッカの苦痛は増すばかり。
そんなある日、ベッカは偶然に見かけた加害者である青年の後を追い
夫に黙って青年と接触を図るのですが・・・

キャリアウーマンでもあった美しく賢いベッカは、
この哀しみに満ちた日々をなんとかしなければと思ってる
さめざめと泣く なんてことが出来ればまだいいのだけど、
それさえ出来ないところに彼女の傷の深さがあるよね。
夫ハウィも一見普通に振舞ってるけど、次第に彼の哀しみはベッカよりも深いのかも知れないと思えてくる。
うーんもう、二人の演技が胸が苦しくなるほど痛々しくてね。
でも、人間ってそうだよなぁと思えるようなところがシニカルでユーモラスでもある。
凄く冷静に人間を見る目を持った人が書いた脚本だと思えるところがポイントが高いです。
 
まぁとにかく二コールの演技の素晴らしいこと。
オスカー主演女優賞逆転勝利もあるんじゃないでしょうか。
個人的には幼い泣き顔のナタリー・ポートマンより、
凛として繊細な二コールの演技に軍配です。
ほぼノーメイクで、美しさを封印(勿論それでも十分美しいですが)してるので
見るものも彼女の演技に集中できるんじゃないかな。
そういう意味では、彼女はこれから本領を発揮する女優さんかもしれませんね。
 
二人の再生への道は始まったばかりだけども、
確実に一歩を踏み出した、と感じるラストに爽やかな余韻を残します。
音楽もいいんですよ。
これは今年の自分のベストに入ると思いますね。
思い出すだけで泣けてくる、ツボにはまりまくりの作品でした。

日本公開は秋。