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映画ノート

フィッシュタンク~ミア、15歳の物語

 

 
カンヌ特集
今日は、2009年のカンヌ映画祭で審査員賞を獲得した『フィッシュタンク~ミア、15歳の物語』。
同年の英国アカデミーでも英国作品賞を受賞していますね。
少女の夢と初恋をビターに描く青春物語。
日本未公開作品です。

 
フィッシュタンク~ミア、15歳の物語<未>(2009)
監督:アンドレア・アーノルド
出演:ケイティ・ジャーヴィスマイケル・ファスベンダー/キルストン・ウェアリング/ハリー・トレッドウェイ

■感想


主人公のミア(ケイティ・ジャーヴィス)はシングルマザーの母と生意気盛りの妹と暮らす15歳の少女。
ダンサーになることを夢見、一人練習に励む日々だが
常に何かに憤りを感じ、感情を爆発させるため、世間からは問題児扱い。
そんな時に出会った母の恋人コナーに、徐々に惹かれていくミアだったが・・
 
イギリスの社会保障制度はどうなってるのか知らないのだけど
この母親は、仕事をしてる風でもなくいつも家にいるのね。
おそらくは十代でミアを生んだのであろう若い母は
友人と電話で話し、新しい恋人を連れ込み、スワッピングまがいのパーティを開く
子供にさほど興味を示さず、正面から向き合うこともない。
 
ミアの憤りの源は、はすっぱな母であり、将来への不安なのでしょう。
何故か「ギザギザハートの子守唄」の歌詞を思い出していましたが
つい尖って、触るものを傷つけてしまうミアが孤独で痛々しいのです。
 
劇中、杭につながれた馬を解放そうとするシーンがあるのですが、
彼女はどこにも行き場のない自分に、痩せて哀れな馬を重ね合わせたのかな。
 
そんなミアにこれまでと違った風を吹き込むのが、母の恋人コナー
さりげない大人の魅力で、15歳が惚れちまうのも無理はない。
でも、そこには思わぬ落とし穴が待ち構えているのよねぇ。

 
映画は終始ミアの目線で描かれるため、
母とボーイフレンドとのベッドシーンでさえ、ドアの隙間から覗き見をするミアの視線という徹底振り。
そのため、想像に任せる部分もあるものの分かりやすいため問題なく、
代わりにミアが感じるコナーの吐息などがダイレクトに伝わって、一緒にドキドキしちゃいます。
女性監督ならでは感性を感じるところです。
ミアを演じるケイティ・ジャーヴィスは可愛いし、ニュートラルな感じがミアにぴったり。
 
 
色男コナーを演じたマイケル・ファスベンダーは『イングロ』や『X-メン』などのメジャー作品にも出てたのね。
先日観た『ジェーン・エア』のロチェスターだったのに、全然気づかなかった(汗)
特別記憶に残る風貌でもないけど、役ごとに雰囲気をかえるカメレオンかも。
 
ミアのダンス好きは、きっと母譲り。
どうしようもないようでいて、家族は家族、と思わせる終盤の描写も
ベタになりすぎず良かった。
 
15歳の少女の初恋と成長が、苦いながらもみずみずしく描かれ、
爽やかな印象さえ残す佳作ですね。