しまんちゅシネマ

映画ノート

それでも、愛してる


 
カンヌ特集
今日は、今年のコンペティション部門から
ジョディ・フォスター監督、メル・ギブソン主演の家族ドラマ『ザ・ビーヴァー』です。
ザ・ビーヴァー/THE BEAVER(原題)(2011)
監督:ジョディ・フォスター
出演:メル・ギブソンジョディ・フォスターアントン・イェルチンジェニファー・ローレンス

■感想


おもちゃ会社のCEOウォルター・ブラック(メル・ギブソン)は妻から別居を言い渡され
沈んでいるところ、ごみ捨て場に捨てられていた、ビーバーの人形を拾い持ち帰る
気づけば、ウォルターは、人形を通しそれまで言えなかったことを口に出し始め
本当のウォルターよりも、前向きで自信に満ちた新しい人格を形成していく。
そんなウォルターを妻(ジョディ・フォスター)も受け入れ、再び家族として暮らし始めるのだが・・
 
重度のうつ病により、内面の危機に瀕した主人公が
家族とともに辿る再生の過程を描いた作品です。
 
ウォルターを演じるのは、あいかわらず濃いメル・ギブソン
パペットを起用に操り、ビーヴァーに命を吹き込みました。
次第にパペット自体がまるで生きてるような、一種ファンタジー的な要素を持っているのが
この映画の面白いところ。
 

主人公には二人の息子がいて、末っ子はまだ小さく無条件に父を愛すのだけど
年の離れた長男はそうはいかない。
長男を演じるアントン・イェルチン君がいつもよりシリアスな演技で
父への尊敬を失い、自分を見失う長男を自然に演じていて上手いです。
イェルチン君のガールフレンドに『ウィンターズ・ボーン』でオスカー候補にもなったジェニファー・ローレンス
心に闇を抱えるもの同士がともに成長するお話でもあります。
 
ビーヴァーに言葉を喋らせることで、前向きに行動できるようになったとみえた主人公が
実は人形なしには、何も出来なくなっていることに気づくことになる
結局は自分で対峙するしかない、それを助けるのが家族というのがテーマかな。

メルは切実過ぎて息苦しささえ感じるところでしたが、家族の描き方はとてもいい。
ただ、心を病んだ人がその危機に真っ向勝負することが簡単だとは思えない点で、
少し違和感を感じるところもありました。
末っ子君が可愛らしいの。ジョディは小さな子供を描くのが上手いですね。
全体には、もう少し遊びを入れても良かったような。

今日は久々の劇場鑑賞で、レッドフォード作品と2本斬りを敢行したけど、
二人に共通するのはまじめすぎるということかな