しまんちゅシネマ

映画ノート

ブロンクス物語/愛に包まれた街


カンヌ特集
受賞者も決まり、カンヌ映画祭が終わりました。
今年、審査委員長を務めたのがロバート・デ・ニーロということで、
例年よりもアメリカ映画からの選出が多かったような。
カンヌクラッシックでは、デ・ニーロレスペクトで、彼の初監督作『ブロンクス物語/愛に包まれた街』を上映。
デ・ニーロの生まれ故郷ブロンクスを舞台に、暗黒外に暮らす青年の成長と彼を取り巻く人々の姿を描く、ヒューマンドラマです。
 
ブロンクス物語/愛に包まれた街(1993)アメリ
監督:ロバート・デ・ニーロ
出演:ロバート・デ・ニーロチャズ・パルミンテリ/リロ・ブランカトー/フランシス・キャプラ/タラル・ヒックス/キャスリン・ナルドゥッチ/ジョー・ペシ

 
■感想
そもそもは、デ・ニーロと同じブロンクス出身のチャズ・パルミンテリの一人芝居として人気の舞台作品を
デ・ニーロが気に入り、映画化が実現したとのこと。
チャズは本作でも主役のイタリアン・マフィアの大物ソニーを演じています。
【ストーリー】
1960年代のブロンクス。9歳のカロジェロにとって、この一帯を牛耳るマフィアのソニーチャズ・パルミンテリ)は憧れの存在だった。ある日、ソニーが殺人する現場を目撃したカロジェロは、面通しでソニーの犯行を否定する証言をする。以来、ソニーは彼をかわいがり、いろいろなことを教えてくれた。
イタリア移民で、実直なバスの運転手であるカロジェロの父ロレンツォ(ロバート・デ・ニーロ)は、幼い息子が権力と金に引きつけられることを恐れ、厳しく忠告するが、父の心配をよそにカロジェロは裏の世界に精通し、ソニーを父のように慕って成長する。
8年が過ぎ、17歳になったカロジェロ、一目置かれる存在となっていた。
 


全編を通し、17歳になったカロジェロのナレーションで語られる構成ですが
カロジェロは、ソニーと父親、それぞれの教えを受け成長していくんですね。
 
本作で、デ・ニーロが演じるのは、イタリア移民のタクシー・ドライバー・・ではなくバス・ドライバー。
息子を深く愛し、守ろうとする父親です。
大事なポジションでありながら、登場シーンは比較的少なめ。
監督としての仕事をきっちりこなしたかったんでしょうね。
 
チャズ・パルミンテリ演じるソニーもまた、カルジェロを息子のように可愛がります。
受けた恩を忘れることのない彼が、カロジェロに教えるのは、真の男としての生き様。
一方で、マフィアの長として生きることの孤独などもきっちり描かれ、渋いです。
 

 
17歳のカロジェロを演じるリロ・ブランカトーは、
デ・ニーロに似ているということでスカウトされただけあって、本当の親子みたい。
黒人の少女との初恋の描きかたも、ピュアでいいんですよねぇ。
 
ただ・・ 惜しいのは邦題の副題でしょう。
確かにマフィアものでありながら、さまざまな愛が描かれているのだけど
「愛に包まれた街」なんてくさくてダサいやん!
 
銃を持つことをよしとしないマフィアたちの「闘うシーン」は思わぬ迫力で
デ・ニーロの経験とセンスを感じるところ。
 
最初は、息子をマフィアから引き離したければ、その土地を離れればいいのに
なんて、思いながらみてたんですが、
最後には、ここブロンクスこそ、彼らが生きる街なのだと感じさせます。
全編に流れる、時代を映す音楽たちも凄くいい。

伏線の回収もきっちり、
初監督でこういう作品を撮ってしまうデ・ニーロ、やっぱ凄いんじゃないでしょうか。
 
最後にあの方がきっちり締めてくれたしね。
凄く好きな作品でした。