しまんちゅシネマ

映画ノート

神々と男たち


cinema de しりとり 31回目 【か】

今日は『ドッペルゲンガー』から繋がって、特別ルール適用の「か」で始まる映画です。
1996年にアルジェリアで起きた、フランス人修道士の誘拐、殺害事件を題材にしたドラマ『神々と男たち』
カンヌ審査員特別グランプリ、セザール賞作品賞などに輝く作品です。
 
神々と男たち (2010) フランス
監督:グザヴィエ・ボーヴォワ
出演:ランベール・ウィルソンマイケル・ロンズデール/オリヴィエ・ラブルダン/フィリップ・ロダンバッシュ
ジャック・エルラン/ロイック・ピション/グザヴィエ・マリー/ジャン=マリー・フラン/オリヴィエ・ペリエ
【ストーリー】
1990年代。アルジェリアの山あいの小さな村にある修道院では8人のカトリックの修道士たちが、戒律に基づきつましく暮らしている。周囲のイスラム住人とも友好関係を築く彼らであったが、
アルジェリア内戦が激しさを増し、修道院の近くでもクロアチア人が殺害される。
修道院にもフランスへの帰国命令が出され、修道士たちは土地を去るかどうかの決断を迫られる。。
 
■感想


修道院で、美しい賛美歌を歌いながら祈りを捧げる修道士たち。
しかし、院を一歩出れば、そこはイスラム教徒の村。
この土地で、修道士たちは、貧しい村人たちと労働をともにしたり
診療所として医療を提供したりしています。
貧しきを助ける奉仕活動もまた、修道士としての大切な仕事なのですね。
 
彼らが村人たちに受け入れられているのは
イスラム教の儀式に招かれ、参加する様子からも伺えました。
 
さて、映画は、そうした修道士と村人の、宗教を超えての交流を描きながら
彼らに、内戦による危機が迫ってくる様子をスリリングに映し出します。
こんな状態で、どうして修道士たちは、その場を去ることを拒んだのか。
映画が描こうとしたのは、そこでしょう。
 
これは実際にあった事件ということもあり
ややネタばれの形になりますので、この先を読まれる方はご注意ください。
 





























神の教えに従い、答えを模索していく修道士たち
彼らが修道士であることの意味を見出していく姿には「感動した!」
 
決意を新たにした晩餐の席で流れる「白鳥の湖」がまた、たまらん。
修道士たちの清清しさと、誇りに満ちた表情は神々しいほどです。
でも、その中で、リーダーであるクリスチャンの表情は、他のメンバーたちと少し違うんですね。
自分の決断が本当に正しかったのか、
自分の頑固さが他のメンバーに危険をもたらすことになったのではないか。
その気持ちが皆に伝染していく、台詞はないのにそれぞれの思いが痛いほどに伝わり
ここは涙なしにはいられませんでした。
 
この映画、音楽映画と言ってもいいほど
合間合間に修道士たちの歌う荘厳な賛美歌が流れるのだけど
その歌声の美しいことと言ったら!
特に、長として賛美歌をリードするクリスチャン(ランベール・ウィルソン)の美声には痺れます。
彼は歌手としてCDを出したりもしてるとのこと。納得~。
 

ところでこの事件、その真相は、いまだ明らかになっていないとのこと。
死体も頭部以外は発見されなかったらしい

限りなく神に近いところで、使命を終えようとした修道士の心を思うと
いたたまれないですね。