しまんちゅシネマ

映画ノート

エッセンシャル・キリング



 
ポーランドイエジー・スコリモフスキ監督によるアクションサスペンス
アメリカ兵の追跡から逃れ、大自然の中、極限のサバイバルを繰り広げるアラブ兵を描く異色作です。
エッセンシャル・キリング(2010)ポーランドノルウェーアイルランドハンガリー
監督:イエジー・スコリモフスキ
出演:ヴィンセント・ギャロエマニュエル・セニエ/ザック・コーエン/イフタック・オフィア
 
ヴィンセント・ギャロ扮するタリバンメンバーの男は、
アフガニスタンアメリカの傭兵3人を殺し逃走、ヘリでの追跡を受けた後捕えられる。
その後ヨーロッパに移送されるも、移動中に移送車が事故を起こしたことから、再び逃走
雪原をひたすら走る・・
 


追っ手から逃げるべく走る映画といって思い出すのは昨年観た『裸のジャングル』と『アポカリプト
大自然の中走る、究極のサバイバル映画はやっぱり面白いですよ。
 
本作で男を突き動かすのは、生きるための本能なんでしょう。
特に、移送車から逃げ出したあとは、土地勘もまるでない地で
行く当てなどないのに、闇雲に走るだけ。
待ち受ける危険に緊張感が走ります。
 


そんな中でも、お腹がすいて食料を調達するシーンにはユーモアを感じます。
特に自転車に乗ったおばさんのシーンは、まさかの大爆笑。
イエジー監督の変態性がキラリ(笑)
 
そんななりふりかまわぬ男が、遭遇するカモシカと見つめ合うシーンが印象的。
一瞬、食料として捉えたかもしれない。
銃を持っていたから、撃ち殺すことも可能だったが、それはしない。
そこには、何か自然を生き抜くもの同士、互いをリスペクトする気高さがあるんだよね。
 
男は究極のサバイバルを制することが出来るのか。
 
大自然の中を走りぬくギャロの身体能力の高さには驚くところだけど
台詞のない中、表情のみで希望や、渇きや、混乱を演じきったところが凄い。
研ぎ澄まされた動物の目から、人のぬくもりに触れた瞬間鋭さが消えた
それはサバイバルの終わりを告げる瞬間でもあったかも・・
 
最後に登場するエマニュエル・セニエの存在も大きい。
言葉をしゃべれないセニエも、自然を生き抜く強さと優しさを身につけた女性でした。