しまんちゅシネマ

映画ノート

メランコリア




ラース・フォン・トリアー
監督のSFスリラー
キルスティン・ダンストカンヌで女優賞を受賞した作品です。
メランコリアには「憂鬱」という意味があり、
これはキルスティンがうつ病の女性を演じる作品だと思ったのだけど
それだけじゃなかったですね。

この映画、2章に分かれていて、
一章目はキルスティン演じるジャスティンの結婚式の様子が描かれます。
式の途中から言動が怪しくなるジャスティン。
何故かジャスティンの母親シャーロット・ランプリングの言動も奇妙で
結婚式は予定どおりに進行せず、皆をイラつかせます。

そして第二章では、ジャスティンの欝の原因ともいえる
巨大惑星メランコリアの地球接近が描かれ、一気にSFスリラーへと様相を変えていくのです。

劇中キルスティンが「The earth is evil」と言うシーンがあるけれど
ヒトラーを擁護する発言をしたというラース・フォン・トリアー監督の本心は
もしかすると、この言葉にあったのかな。
つまり、邪悪な人類の存在により、地球は滅びるべきであると・・。

今年はなんと言っても2012年。
数年前までは、それほど真剣に考えてなかったのだけど
ここのところの地球の異変を見るにつけ
世界の終末がこんなふうにやってくることもありかな・・と思ったりもします。
奇しくも昨年のパルムドール
地球の創生に遡り、命の根源を描いた『ツリー・オブ・ライフ』が受賞したけれど
地球の終末を描くことで人類の罪や魂の救済をあぶりだす本作こそ
今の私たちが求める作品かもしれません。

ワーグナーの「トリスタンとイゾルテ」のオーケストラのサウンドをバックに
繰り広げられるスペクタクルな映像美も圧巻。
キルスティンとW主演と言うべきシャルロット・ゲンズブールの演技も見事です。
シャーロット・ランプリングの奇怪な言動も、最後まで見れば
あー、そうかと謎が解けます。
一瞬たりとも息を抜けない緊張感の中、ふっと訪れる静寂に
最後は不思議な安らぎを感じ、ひたすら泣きました。
ヒトラー発言が不利になったか、アカデミーから嫌われてしまったけど
何はともあれ、これは凄い作品です。

日本公開は2/17~