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映画ノート

フランス映画未公開傑作選『ある秘密』

引き続きクロード・ミレール監督いきます。
今日はフランス映画未公開傑作選で公開される『ある秘密』を。
フランスでベストセラーとなった同名小説の映画化で、
第2次大戦下のフランスで、あるユダヤ人一家に起こった悲劇を描く作品です。

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ある秘密
2007年(フランス)
原題 Un secret
監督:クロード・ミレール
出演:セシル・ドゥ・フランスパトリック・ブリュエルリュディビーヌ・サニエジュリー・ドパルデューマチュー・アマルリック、ナタリー・ブトフー、イブ・フェアホーフェン、イブ・ジャック
【ストーリー】
内気で病弱な少年フランソワはある日、屋根裏部屋で古いぬいぐるみを見つけたことをきっかけに、両親の知られざる過去を知る。父マキシムは母タニアと一緒になる前、アンナというユダヤ人女性と結婚していた。しかし、ナチスの存在がアンナの情緒を不安定にさせ、その一方でマキシムは結婚式で出会った美しいタニアに心ひかれていき……。(映画.comより)

この映画では、フランスに住むあるユダヤ人一家の複雑なストーリーが、
3つの時間を交錯させながら描かれます。
最初に描かれるのは、第二次大戦後。
肉体派の父マキシムと、飛び込みの選手でモデルでもある美しい母タニアの一人息子である
フランソワは、ヒョロヒョロとひ弱で運動の出来ない子供。
期待にそえないことのストレスからか、彼には想像上の兄がいて両親を戸惑わせます。
そんなある日、フランソワは偶然に、自分には本当に兄がいたことを知ることになるのです。
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時代は40年代に遡り、マキシムの結婚式。
花嫁はリュディビーヌ・サニエ演じるアンナ。
この結婚式の場でアンナの友人として紹介されるのがセシル・ドゥ・フランス演じるタニアで
マキシムは輝くように美しいタニアに魅かれてしまうんですね。
ユダヤ人であることを嫌うマキシムが、輝くようなブロンドで
快活なタニアに惹かれるのは無理ないかもという描き方。
けれども、勿論それは許されない恋。
そうするうちに、ナチスによるユダヤ人迫害が厳しさを増し始め・・・。

最後に80年代の大人になったフランソワを演じるのがマチュー・アルマリック
登場時間は少ないながら、その表情だけで心の傷を想像させる演技が秀逸。

現在の映像がモノクロで描かれるところにも
十字架を背負って生きることの虚しさが投影されているのでしょうね。

アンナの行動は、諦めなのか、はたまた復讐なのか。
タニヤとアンナの辿る道は違ったけれど
それぞれに女の強さと執念を感じるところでした。

一家の「秘密」を手繰り寄せる手法で、戦争の虚しさと
戦争が終わってなお消えることのない心の負いを描き出す秀作ですね。
2本目にして早くもミレール監督のとりこです。

★★★★