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映画ノート

オゾン監督の描く母性と父性『ムースの隠遁』 :三大映画祭週間 特別上映作品

さて、三大映画祭週間 乗っかかり企画一本目は
特別枠として上映されるフランソワ・オゾン監督の『ムースの隠遁』を。
他界した恋人の子供を宿し、世間から離れ暮らすヒロイン、ムースが
ある結論を出すまでを描くヒューマンドラマです。






ムースの隠遁
2009年(フランス)
原題:
Le refuge
監督:フランソワ・オゾン
出演:イザベル・カレルイ=ロナン・ショワジーメルビル・プポー



ムース(イザベル・カレ)とルイ(メルビル・プポー)は幸せなカップルだったが、
いつしかドラッグに溺れルイが急死、同時にムースは妊娠を告げられた。
ルイの葬儀の場で、ルイの両親から堕胎を示唆され、
傷ついたムースはパリから遠く離れた町で一人隠遁生活を送り始めた。
数ヵ月後、お腹の大きくなったムースのもとをルイの弟ポール(ルイ=ロナン・ショワジー)が訪ねる・・・。






邦題のムースというのはヒロインの名前。
ムースはお腹の赤ちゃんは恋人の生まれ変わりと感じ
赤ちゃんの誕生を楽しみにしているのだけど
それは恋人との再会を待ち望むようなもので
母性というのと少し違う気がします。

そんな時に現れたルイの弟ポール。
実は彼はゲイなのだけど、ある理由から母体との繋がりに特別の思いがある。


見終えた時の率直な感想は、オゾン監督らしいゲイ視点だなぁということでした。
ともすれば、母性軽視とも思える描き方なんですが
ムースの出す結論も、母親としてのひとつの愛の形かもしれないと思うようになりました。

人間、妊娠したからと言って、必ずしも速攻母性を獲得するわけでもないんでしょう。
愛する人と共にいて、お腹の赤ちゃんへの愛情も育くまれていくのかもですね。

オープン・ゲイであるオゾン監督は
『ぼくを葬(おく)る』でもそうだったけど
自分の子供を持つということに大きな関心があるのかなぁと思いますね。

2009年のサン・セバスチャン国際映画祭審査員賞受賞。

アブノーマルかもしれないけれど、男女それぞれの
新しい「命」への思いが詰まった繊細な作品でした。

★★★★