しまんちゅシネマ

映画ノート

歴史を背景に描く異色スプラッタ『気狂いピエロの決闘』

今日は三大映画祭週間上映作品から
ヴェネチアで監督賞にあたる銀獅子賞受賞を受賞した『気狂いピエロの決闘』を。
スペイン内戦の時代とカレロ・ブランコの暗殺の1974年を背景に
サーカスのピエロの哀しみと狂気を描く、異色スプラッタ・ドラマです。




気狂いピエロの決闘
2010年(スペイン・フランス)
原題:
Balada triste de trompeta
監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア
出演:カルロス・アレセスカロリーナ・バングアントニオ・デ・ラ・トレ



スペイン内戦が激しさを増す1937年、ハッピーサーカス団のピエロは
意思に反し、民兵として参戦を余儀なくされる。
時は移り1973年、ピエロだった父の意思を継いだハビエルは
サーカス団に入り、泣き虫ピエロとして働き始める。
そこで美しいアクロバットダンサーのナタリアに心奪われるが
彼女は花形ピエロであるセルジオの恋人。
しかしナタリアがセルジオから暴力を受けていることを知ったハビエルは
彼女を救いたいと思い・・


カルト的な人気を誇るスペイン人監督アレックス・デ・ラ・イグレシア
ヴェネチアタランティーノに絶賛された作品です。

残忍で暴力的なのに子供に愛されるセルジオアントニオ・デ・ラ・トレ)と
悲しみを背負いすぎて、子供を笑わせる術を持たないハビエル(カルロス・アレセス
対照的な2人のピエロが、美しいダンサーをめぐって、グログロな死闘を繰り広げる
表面的にはそんな話なんですが、
この2人のキャラクターはスペインのメタファーとして描かれてるようで
内戦の時代からの歴史を背景にその狂気と哀しみを描き出す
政治的な意味合いを持つ作品となっています。




ゲテものB級風でありながらアーティスティックでもあって、
予想外にしっかり作られてるという印象だったけど
残虐描写のある独特な世界観は好みの分かれるところかな。

有名な台詞にオマージュを捧げたかにみせて、歴史を皮肉っていたり
歴史上の人物も何人か登場するので、
この映画を楽しむには、フランコ支配の頃のスペイン事情を知ってるほうが良さそうです。

ナタリアを演じたカロリーナ・バングが美しい~。



原題にもなってるラファエルの歌う『Balada Triste De Trompeta 』の
昭和歌謡風のメロディが、狂気の行く末の切なさに拍車をかけました。


★★★☆